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幸矢が新しく仲間になって1週間が経ち、私たちはコトブキシティに戻ってきた。

この1週間一緒にいて分かったことは、彼は対人関係が不器用だということだった。

みんなの会話に進んで入っていく訳でもなく、大抵は本を読んでいるか窓の外を眺めているかのどっちかだ。

話題を振るときちんと受け答えはしてくれるから、他人に無関心って訳じゃないんだろうけど……。

來夢は元々の人見知りな性格が災いしているのか、どう接したら良いのか分からないみたい。

「やっと着いた、コトブキシティ!」

本来の目的地であるミオシティへは船が出ているらしいけど、今日はそのメンテナンスが長引いてて運休なんだって。

ポケモンセンターで部屋を取り、この街のデパートへ買い物に行くことにした。

「さてと。じゃあみんな、集合時間になったらここに来てね」

「はーい! ねぇねぇ來夢、服とアクセサリー見に行こうよ!」

「わわっ……引っ張ったら危ないよ!」

「誠士は、今日どうするの?」

「レシピ本が欲しいから、書店コーナーに行くつもりだ。
買い物が終わったら來夢と笑理に合流しようと思う」

「じゃあ僕は、屋上の広場に行こうかな。勇人も行く?」

「おぅ、たまにはのんびりするのも良いかもな」

「トレーナーがいない状態でバトル始めたらダメだよ」

「分かってるって」

みんながそれぞれの目的地に向かっていく。

大勢のお客さんで賑わう中、私はどこに行こうかと首を捻った。



「アンタは行かなくて良いのか?」



私の隣でそう呟くポニーテールの青年。

「んー、今は特に欲しい物も無いんだよねぇ。"幸矢"は何かある?」

「俺か?」

そう。私自身とても驚いたんだけど、この青年はあの幸矢だ。

朝起きて人間の姿になっていた幸矢が大慌てで私ところに来た時、"どちら様!?"ってお皿を取り落としそうになったんだよね。

幸矢も幸矢で擬人化のことは全く知らなかったらしく、"……そんなこともあるのか"って言ってた。

クール系イケメンだったのは少し意外だったな。見た感じの歳も近そうだし。

それはそれとして、トレーナーとして幸矢のことを知るチャンスだ。今日はとことん幸矢に付き合おうかな!

「あんまり高い物は買ってあげられないけど、欲しい物があるなら買って良いよ。
見たい場所があるなら、そこに行っても良いし」

「それなら……」

そう言って歩き出した幸矢の後ろを、私は慌てて追いかけた。


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