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「そっか……。じゃあ、私と似てるね」
『アンタと?』
「私も今自分がどうすれば良いのか、"私"っていう人間が何なのかよく分かんなくなってるんだよね。
みんなとの旅が楽しくない訳じゃないよ。
だからこそ、この旅を通じて自分が何者なのか知りたい。そのために、みんなと一緒に強くなりたいんだ。
それが、私の戦う理由かな」
『"一緒に"、か……』
「うん。そこで提案なんだけど……ブイゼル君、私たちと来ない?」
『俺が?』
ブイゼル君が再び目を丸くする。
この子が戦う意味を無くしたのなら、助けてあげたい。
戦う理由を見失ったのなら、見つけられるように手を引いてあげたい。
「一緒に探そうよ。君の……"君だけ"の戦う理由を」
私が差し出した手を、ブイゼル君はジーッと見つめる。
手を跳ね除けられてしまえば、信用が無かっただけの話。
少しでも私を信じてくれるなら、この手を取ってくれないかなーなんて。
『……分かった』
ブイゼル君はポツリと呟いたかと思うと、私の手の上に自分の手を重ねた。
『アンタと一緒に旅をして、もう1度戦う理由が見つけられるなら……。
俺を必要としてくれると言うなら、"俺"という存在をアンタに預ける』
「君の納得のいく理由が見つからなかったとしても、私たちと歩んでくれるなら"仲間"だよ。
よろしくね、"幸矢"!」
『ゆきや……?』
「うん、君の名前。この世界で1つしかない、君だけの名前だよ」
『幸矢、か……。悪くないな』
あ、ちょっと笑ってる。
幸矢──。
"矢のように"って言ったらおかしいかもしれないけど。
たくさんの幸福が君を幸せにしてくれますように。
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