11


「そっか……。じゃあ、私と似てるね」

『アンタと?』

「私も今自分がどうすれば良いのか、"私"っていう人間が何なのかよく分かんなくなってるんだよね。
みんなとの旅が楽しくない訳じゃないよ。
だからこそ、この旅を通じて自分が何者なのか知りたい。そのために、みんなと一緒に強くなりたいんだ。
それが、私の戦う理由かな」

『"一緒に"、か……』

「うん。そこで提案なんだけど……ブイゼル君、私たちと来ない?」

『俺が?』

ブイゼル君が再び目を丸くする。

この子が戦う意味を無くしたのなら、助けてあげたい。

戦う理由を見失ったのなら、見つけられるように手を引いてあげたい。

「一緒に探そうよ。君の……"君だけ"の戦う理由を」

私が差し出した手を、ブイゼル君はジーッと見つめる。

手を跳ね除けられてしまえば、信用が無かっただけの話。

少しでも私を信じてくれるなら、この手を取ってくれないかなーなんて。



『……分かった』



ブイゼル君はポツリと呟いたかと思うと、私の手の上に自分の手を重ねた。

『アンタと一緒に旅をして、もう1度戦う理由が見つけられるなら……。
俺を必要としてくれると言うなら、"俺"という存在をアンタに預ける』

「君の納得のいく理由が見つからなかったとしても、私たちと歩んでくれるなら"仲間"だよ。
よろしくね、"幸矢"!」

『ゆきや……?』

「うん、君の名前。この世界で1つしかない、君だけの名前だよ」

『幸矢、か……。悪くないな』

あ、ちょっと笑ってる。



幸矢──。

"矢のように"って言ったらおかしいかもしれないけど。

たくさんの幸福が君を幸せにしてくれますように。


[*prev] [next#]






TOP
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -