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「えっと……」
つい、言葉に詰まってしまった。
"元々別の世界から来て、元の世界に帰る方法を探してた"なんて話を信じてくれると思わないから。
仮に今ここでその話をして、來夢たちを驚かせたくない。
特に笑理は"帰っちゃヤダァ!"って言いそうだし。
『……。戦いたいから戦うってのはダメなのか?』
『は……』
勇人の言葉にブイゼル君は目を丸くし、気の抜けたような声を出す。
『先に言っとくが、ただ力を誇示するって意味じゃないぜ。
一方的な力は暴力と変わりゃしねぇからな。
相手も自分も全力でバトルして、互いを認め合う。そうやって一緒に成長出来る方が嬉しいし、楽しいんだよ。
それに力や強さってのは自分の大事なモン守るためにあるんだって、昨日ビークインと戦ってて思った。
これが俺の戦う理由だ』
ブイゼル君の目が揺らいでいる。
彼にとって、今の勇人の答えは想定外のものだったんだろう。
『……そこまで考えていたとは思わなかった』
『ど、どういう意味だよ!?』
「まぁまぁ……。じゃあ、君は何のために戦ってるの?」
『俺は……』
ブイゼル君が口を閉ざしてしまった。
言いにくいことでもあるのか、口を開きかけては閉じるを繰り返している。
やがて何かを諦めたようなため息をついた。
『……分からない』
『は?』
『分からないんだ。自分が何のために戦うのか、どこを目指して戦っているのかも。
かつて俺は、あるトレーナーのポケモンだった。初めはバトルも純粋に楽しんでいた。
だがあるトレーナーとのバトルを境に、俺は負けが続くようになった。
俺のトレーナーだったヤツは、俺に弱点を克服させると言って連日エレキブルとバトルさせたんだ』
ブイゼルは確か、地面タイプの技をあまり覚えられなかったと思う。
ヌオーやトリトドンならともかく、水タイプ単体のブイゼルを電気ポケモンにぶつけるなんて私には出来ない。
……ポケモンたちが強く望むなら、やらなくもないけど。
「それで……その後は?」
『"役立たず"と言われて、俺は捨てられた。それからの俺は戦う意味を見失った。
この森のポケモンや、森を通るトレーナーにバトルを挑んだが……。勝っても満たされず、負ければ自分への苛立ちが募る毎日だ』
"あいつ、勝ったのにちっとも嬉しそうじゃなかったんだよね"
"あと……エレキブルを連れたトレーナーには絶対に手を出さないんだそうです。
せっかくバトルを挑んでも、エレキブルが出てくると逃げちゃうらしくて"
ヒカリちゃんとポッタイシ君の言葉が脳裏を過ぎる。
エレキブルを避けていたのは、そういうことだったのか。
(それに──)
この子は、今の私に似ているんだ。
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