09
翌朝──
私は朝早くに起こしてもらい、ヒカリちゃんたちに約束したお菓子を作った。
ちなみに、作ったのはマカロン。
笑理と焔がカウンターの奥から顔を半分だけ出して覗いていたので、2個余分に作って味見してもらった。
私が期待でキラキラした目に弱いって分かってやってるな、くそぅ……。
粗熱を取ったマカロンを袋に入れてラッピングする。よし、出来た!
食堂でヒカリちゃんたちと待ち合わせて、一緒に朝ご飯を食べた。
マカロンを差し出すと、2人ともとても喜んでくれた。早起きした甲斐があったよ。
ピンプクも食べたがっていたけど、まだ固さのある物は食べられないらしい。
"ピンプクはもう少し大きくなってからね"ってヒカリちゃんに言われて、"ママのいじわゆー!"ってむくれてた。
その後2人とは別れて、ノモセジムへ向かう。
マキシさんにもお礼にマカロンを渡すと、"ありがとう、甘い物は俺様も大好きだぁ! 後でポケモンたちといただこう!"って言ってくれた。
ノモセシティを出発して、森の中を進む。目指すのは昨日ビークインとバトルした、あの場所だ。
隣では勇人が自分の脚で歩いている。今の体の感覚に慣れておきたいんだって。
『あのブイゼル、この近くにいるかな?』
「どうだろう……。まぁ会えなかったら会えなかったで、仕方ないよ」
『じゃあもしブイゼルに会えなかったら、あのマカロン食べても良い?』
『あっ、ズリィぞ笑理! 俺だって食いてぇ!』
「ブイゼルに会えなかったら、ね。笑理にはポフィンあげるから、今日は勇人に譲ってあげて」
『はぁい』
湿地を抜けて、川の流れに沿って歩いていく。
そろそろ目的地だという場所に差し掛かると、そこにブイゼル君はいた。
『……来たか』
「お、はよう……。偶然だね?」
『いや、偶然じゃない。ここでアンタとコモルーを待っていた』
「私と勇人を?」
『聞きたいことがあるからな。アンタたちは……』
「あ、ちょっと待った」
ブイゼル君の話にストップをかけ、すかさずオレンジのマカロンを握らせる。
彼は手の中のマカロンを不思議そうに眺めて、スンスンと匂いを嗅いだ。
『これは……木の実にしては随分軽いな』
「それはマカロンっていうお菓子だよ。昨日のお礼に渡したくってさ」
『……まさかとは思うが、ビークインとのバトルのことか?』
「うん。あそこで君が来てくれなかったら、今頃私たちは大ケガしてたかもしれない。
だからあの時、本当に助かったし心強かったんだ。ありがとうね」
『……変わってるな、アンタ』
ブイゼル君は一言そう呟いて、マカロンにかぶりついた。
無言でモグモグと咀嚼して飲み込むと"……美味い"と僅かに頬を緩ませた。
声の雰囲気もどことなく優しいものになってるから、気に入ってくれた……のかな?
「口に合ったみたいで良かったよ。それで、私たちに聞きたいことって?」
『初めて会った日にも聞いたことだ。アンタたちは何のために戦う?』
[*prev] [next#]