05


ジュン君に連れられて来たのは、私が探していたエリアよりも更に森の中だった。

森の中に入れば入るほど、ガーン! ガーン!と何かが激しくぶつかる音が大きくなる。

ほら、アイツだ! と小声で言うジュン君の指差す方を見る。

そこにあったのは木の幹に思念の頭突きを繰り出すコモルーの姿だった。

あのコモルー……間違いなく勇人だ。

無事だったことに、ほっと胸を撫で下ろす。

見つけてくれたのがジュン君で本当に良かった。

でも勇人は長い時間あんなことをしていたのか、体中傷だらけだった。

脚に力が入らないのか、倒れ込んでしまう。

その時、遠くの方で小さく何かが聞こえてきた。



『クソっ……何で思うように動かねぇんだよ……。
スピード勝負がダメなら、どうすりゃ良いんだ……。
強くなんなきゃ、俺は……レイナにとって役立たずのままになんのかよ……!』



「……!」

勇人の口から溢れだした、彼の悔しい気持ち。

それは私を突き動かすには十分だった。

「勇人!」

森の脇道を突っ切り勇人に駆け寄る。ボロボロになった彼をそっと抱き締めた。

「役立たずなんて、そんなこと言わないでよ」

『レイナ……? 何で……』

「ごめん……。ごめんね、勇人」

言葉を覚えたてのぺラップみたいに、私は何度もごめんと繰り返した。

『……何でレイナが謝んだよ』

「私、考え無しだった。
勇人はいつだってバトルに全力で、これ以上に無いくらい頑張ってくれてた。
それなのに、私が勇人の頑張りを否定するようなこと言ったから……」

私は、勇人の努力と信念を踏みにじった。

それにコモルーの体格を考慮せずに今まで通りのバトル展開にしたのは、勇人じゃなくて私だ。

勇人は何も悪くない。今回の件の非は私にあるんだから。

「勇人、次はあのブイゼル君に勝とう。
これからのバトルスタイルをどうしていくか……みんなで一緒に考えようよ」

『……ハァ、敵わねえよなぁレイナには。
そんな顔でそんなこと言われたら、ヤケになってた俺がバカみてぇじゃねえか』

そう言って、勇人は私の顔に手を伸ばす。

いつの間にか零れていたらしい涙を拭おうとしてくれたみたいだった。

「……届いてないんだけど」

『し、仕方ねぇだろ! 脚が短ぇんだから!』

「……フフッ……アハハハ……!」

『笑うなよレイナ! ……ヘヘッ』

勇人の顔に笑顔が戻る。言動もいつもの彼の口調になっている。

もう……大丈夫だ。


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