01
『神子……』
真っ暗な空間に響く声。私はまた、あの暗闇の中に立っていた。
でも、前の時の声と違うような……?
「誰?」
闇の中に向かってそう問いかける。
すると目の前に、黄色い光が姿を現した。
『あぁ、良かった。私の声がちゃんと聞こえるようですね。
今日は貴女についての話をしに来ました』
「私のことって、どういうこと?」
『まず、何故私たちが貴女のことを"神子"と呼ぶのかをお話しましょう。
神子、貴女は"時の神子"と呼ばれる存在なのです』
「時の神子?」
何だろう? 聞いたことが無い。
『時の神子はディアルガ様によって生み出され、ディアルガ様と共に時間を司る人間のことです』
「ちょ、ちょっと待って!?」
いきなりそんなことを言われても困る。
"ディアルガによって生み出された"ってことだけでも混乱するのに、"時間を司る"なんて言われても頭の中はパニックだ。
そもそも、私はディアルガとは1度も会ったことが無い。
そう言うと、"いいえ、貴女は何度もディアルガ様とお会いしています"と黄色い光は答えた。
『今は神子としての記憶が封じられていますから、覚えていないのも無理はありませんね』
「……私がディアルガに会ったのって、いつ?」
『最初にお会いしたのがシンオウが創られた頃、最後にお会いしたのが数百年ほど前です』
「はい!?」
そんなに昔なの!? っていうか、"昔"ってレベルじゃないよね!?
『シンオウの"始まりの神話"はご存じですか?』
「え? う、うん。
アルセウスが宇宙を創ったっていう神話だよね? 本で読んだよ」
『ではアルセウス様が、ディアルガ様とパルキア様を生み出したということも?』
「本で読んだ程度なら……」
『それだけ知っているのなら十分です。
アルセウス様によって生み出されたディアルガ様とパルキア様は、シンオウを創造なさった後にご自身の分身を生み出したのです』
湖のポケモン……は違うか。アルセウスが生み出したって本にあったし。
『ディアルガ様は常に時間が変わりなく流れるように見守る責務があります。
時間を操ろうとする人間が現れた時、それを監視する存在が必要だったのです』
「じゃあ、その存在っていうのが……」
『はい、それが"時の神子"。
ディアルガ様と共に時間を司り、ディアルガ様の目となって時間の流れを守る人の子なのです。
そして、その生を終える度に転生を繰り返します。
神子としての記憶を封じたまま成長し、来るべき時に封印が解かれるのです』
「……ちょっと理解が追い付かないんだけど。
つまり今の私は、その"時の神子としての自分"を忘れてるってこと?」
『その通りです。いつか必ず、その記憶を取り戻す時が来ます。
……もうじき朝ですね。それでは神子、また会いましょう』
黄色い光は最後にそう言うと、暗闇に溶け込むように消えていった。
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