07


それから数日後。

ジョーイさんの的確な治療で一命を取りとめた勇人。

今ではすっかり元気を取り戻して、大盛りのおにぎりをペロリと平らげた。

ノモセジムに連絡を取り、訪問の約束を取り付ける。

改めてノモセジムに行くと、ジム戦の時のようにマキシさんが仁王立ちで待っていた。

私の隣を歩く勇人を見て、満足そうに笑う。

「おぉ、待っていたぞレイナ君!」

「こんにちは、マキシさん。この前はありがとうございました」

「なぁに、コモルーが元気になって何よりだ!
よし! ではジムバッジを渡すぞ!」

私はつい、ジムバッジを受け取ることを躊躇ってしまった。

隣で勇人が"貰わねぇのか?"と不思議そうに見てくる。

「……何か気になることがあるようだな。
俺様が思うに、バッジを受け取ることに躊躇いがあるんじゃないのか?」

豪快でロマンチストなマキシさんだけど、人のことをよく見てるな。

ジムリーダーとして、たくさんのトレーナーを見てきたからこそ分かるんだろう。

「あの時のジム戦で、勇人に無茶な戦い方をさせてしまった自分が許せないんです。
水タイプを持っていないことや、進化したばかりの体に馴染めてない可能性を……どうして考えてあげられなかったんだろうって思ってしまって……。
結果的に勇人が生死を彷徨うことになっちゃったから、ジムバッジを受け取る資格は……」

マキシさんは黙って聞いた後、"ガッハッハッハ!"と豪快に笑った。

「レイナ君、君は何か勘違いしているらしい」

「え?」

「確かにポケモンジムはバトルで己の強さを試す場所。
だが、ジムリーダーが見定めるべきは"強さ"だけじゃあない。
トレーナーとポケモンの絆や信頼、ポケモンに対する思いやりや優しさも試している」

「思いやりや、優しさ……?」

「そうとも。
君はジム戦の後、コモルーを助けるために真っ先にプールへ飛び込んだ。
自分がずぶ濡れになることも厭わず。
今回はジムのプールだからまだ良かったが、これが流れの速い川や海のど真ん中だったらどうなる?
コモルーを直ぐに見つけられない上に、君自身も命の危険に晒されるかもしれん。
あの時の君の行動は、なかなか咄嗟に出来ることではない。
だからこそ俺様は君を、"ジムバッジを受け取るに相応しいトレーナー"だと認めたわけだ!」

ただし無茶なバトルをさせてしまったのは、次に同じことをしないように教訓にすることが大切だぞとマキシさんは言う。

彼の言葉には、人を奮い立たせる力がある。

反省点を指摘しながらも、ネガティブな感情をポジティブに変えてくれる──そんな力が。

そんな所が、街の人たちから慕われる所以なのかもしれない。

「私、頑張ります。少しずつでも前に進んで行けるように。
これからもずっと、みんなと一緒に強くなっていきたいから!」

「うん、良い答えだぁ!
そして、これがノモセジムを勝ち抜いた証・フェンバッジ!
受け取ってくれ!」

「はい、ありがとうございます!」

マキシさんからフェンバッジを受け取り、ケースへ収める。

ピカピカのジムバッジを見て笑う私と勇人。

この時、ジムの外から小さなオレンジ色の影が見つめていたことを……私たちはまだ知らない。


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