02
「……来たか」
リッシ湖の畔に立つ、1人の男。
彼は僕の存在に気が付くと、こちらが答える暇もなく本題に入り始めた。
「あの娘の動向はどうなっている?」
「このままノモセシティへ向かうようだ」
「……そうか。しかし、いつまでも張り付いているわけにもいくまい。
そろそろこちらの組に入るよう、あの方からの指令だ」
「そのことだが、僕はまだ同行する方が良いように思う。
彼女が敵に回ってしまえば計画が成り立たなくなる。
あの方の計画のために、彼女の信頼を強くしておくに越したことはない。
都合上そちらと敵対することもあるだろうが、それは計画完遂のための行動だということを理解して欲しい」
「……ふむ、一理あるか。
分かった。あの方には私から申し上げておく」
ひとまず、男が納得してくれたことに安堵する。
「だが、お前を監視していることも忘れるな。
"惚れた弱み"から我々を裏切る、ということにならないことだ」
「……!? あ、あぁ……分かっている」
男は霧に紛れて静かに去っていった。
僕も毎朝の日課を始めるため、軽く駆け出した。
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