06
「あのなぁ、お前ら……。
言い合いするなとは言わねえが、時と場合ってもんをちったあ考えろ」
「「ハイ、スミマセンデシタ……」」
ホテルフロントでの言い合いのことで、緋色君のお説教を受けてかれこれ30分。
マズイ、足が痺れてきた……。
「緋色。2人も反省しているようだし、そろそろ終わりにしては……」
「せっかくのホテルなんだし、楽しまなきゃ損だよ」
誠士と笑理がやんわりと止めてくれる。
ありがとうね2人とも。でも私の足のHPはもう0よ。
「……そうだな。んじゃま、この話は終いにするか」
「ねぇねぇレイナ、こっち来てみて! リッシ湖が綺麗に見えるよ!」
「ちょっと待って焔……。あ、足が痺れて……」
「大丈夫? 立てるかい?」
「無理そう……。しばらく座ってるよ」
正座から体育座りに体勢を変え、痺れが取れるのを待つ。
5〜10分もすればだいぶ収まってきたので、改めてベランダに立ってリッシ湖を見渡した。
「わぁ〜、綺麗……!」
シンジ湖を見たのは昼間だったけど、月光に照らされた湖っていうのも乙だね。
湖の真ん中には、シンジ湖にもあったような小島が浮かんでいる。
「あの小島、シンジ湖にもあったな……」
「エイチ湖にもあったよ。
キッサキシティの住民が言うには、ユクシーというポケモンが眠っているらしい。
もしかしたら、あの洞穴にはアグノムが眠っているかもしれないね」
「ふーん?」
じゃあシンジ湖には、エムリットが眠ってるのか。
感情を司るエムリット、意志を司るアグノム、そして知識を司るユクシー。
3匹とも"神様"って呼ばれてるポケモンだったよね……。
いつか会ってみたいなぁ、と思いながらリッシ湖に目線を戻した時だった。
「……! ねぇナオト、ちょっと来て!」
「どうしたんだい?」
「ほら、あれ見て!」
洞穴の上空に浮かぶ青い光。
暗闇の夢に出てきて、私たちを"神子"と呼んだあの光だった。
青い光はまるで水中を泳ぐかのようにスイスイと湖面を飛び回った後、スーッと静かに消えていった。
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