06

「君は……テンガン山で会ったトレーナーか」



人影の正体は、以前テンガン山で遭遇したギンガ団のボス・アカギだった。

「まさかここで会おうとはな。
だが丁度良い。今度こそ私と一緒に来てもらおう」

「結構です先を急ぐので失礼します」

早口で捲し立てながらアカギの横を素通りしようとする。

でもあの時と同じように、通り抜ける前に腕を掴まれてしまった。

しかも力が強い……!

『レイナを離せ!』

誠士がモンスターボールから飛び出して来るけれど、今ここでアカギを攻撃すれば私まで巻き添えになってしまう可能性がある。

アカギにそれを指摘され、誠士は悔しそうに表情を歪めた。

「そうだ、それで良い。抵抗しなければ手荒な真似はしない。
君のその"力"が、君の存在が。私の望む世界を作るために必要なのだ」

「い、や……! 離して!」

腕力で敵うはずもなく、ズルズルと引き摺られていく。

私はこのまま、ギンガ団のアジトまで連れていかれるんだろうか……?

その時──



「何をしているんだ!」



聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはナオトがいた。

「ナオト!」

ナオトはこちらへ駆け寄って、私とアカギを引き離してくれた。

私を背後に庇い、アカギを睨み付けている。

「嫌がる女性を無理矢理連れて行こうとするなんて、貴方には人の心が無いのか?」

「私には"心"などという目に見えぬ不確定なものなど不要だ。
……今回は退くが、3度目は無い。次に会った時は必ず手に入れてやる」

アカギは表情の読めない顔で淡々と話すと、カンナギタウンから去っていった。

姿が見えなくなったのを確認すると、ナオトは勢い良く振り返って私の肩を掴んだ。

レイナ、大丈夫かい!? あの男に何かされたりは!?」

「大丈夫、腕を掴まれた以外は何もされてないよ」

「……そうか、良かった」

ハァ〜、と安堵のため息を零すナオト。

彼が助けに入ってくれなかったら、今頃どうなってたんだろう?

考えるだけでおぞましく思えてきて、背筋が凍る思いだった。

って、今はそんなことより。

「ありがとうナオト、助けてくれて。
でも、どうしてカンナギに?」

「漢方薬を買いに来たんだけど、町に入ってすぐ君が誘拐されてるのを見かけたから慌てて止めに入ったんだ。
それに、前に言っただろう? "追い付いてみせる"って」

確かにそう言ってた。言ってたけど……



(追い付くの早くない?)



何はともあれ、ナオトもメリッサさんに勝ったんだね。

私はナオトの提案で、この町にあるという漢方屋さんに行くことになった。


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