08


ルカリオと焔のバトルが始まってからというもの、私はただただ翻弄されてしまっている。

なぜなら……



「焔、火炎車!」

「神速でかわしてください!」



そう、こっちの攻撃をことごとくかわされているから。

本来"神速"は素早い動きで攻撃を繰り出す、いわば電光石火の上位版のような技。

それをスモモちゃんは"攻撃"ではなく"回避"のために使うよう指示を出していた。

『ぜ、全然捕まえられないよ〜……』

「まさか攻撃技を回避に使うなんて……」

「私のルカリオは、他のルカリオと比べて足が遅いんです。
それを克服するために編み出したのが、神速を使った回避方法なんですよ」

ポケモンの個体ごとに能力やポテンシャルが違うことは知っていたけど、そんな克服方法を思いつくなんて……。

やっぱりジムリーダーってすごい……。

『速さ……。ねぇレイナ、ちょっとやってみたいことがあるんだ!
穴を掘るの指示を出して!』

「え? わ、分かった!
何をするのかは分からないけど……穴を掘る!」

焔が地面に潜り、ルカリオの動きが止まる。

『焔、何するんだろう?』

『さぁ……?』

「姿を隠す作戦で来ましたか。ルカリオ、神速で攪乱してください!」

スモモちゃんの指示を受けたルカリオが、縦横無尽にフィールドを駆け回る。

が、一向に焔が地中から出てこない。本当に何をするんだろう?

「出てこないならこちらから引きずり出します! ルカリオ、地面に向かってボーンラッシュ!」

ルカリオのボーンラッシュで地面に亀裂が走る。その途端、地中から焔が飛び出してルカリオの背後を取った。

『なっ……!?』

『いっけぇ!』

焔がルカリオに向かって拳を突き出す。

そしてそれは、目に見えないほどの瞬速のパンチとなってルカリオを吹き飛ばした。



「え……えええぇぇっ!?」



何が起きたのか全く分からず、私は唖然とするしかない。

そこ、間抜けヅラとか言うな。

『おいおい、何だ今の技!?』

「わ、分かんない……。あ、そうだポケモン図鑑」


ポケモン図鑑を取り出して、焔をスキャンする。

そこには、引っ掻くを忘れた代わりにマッハパンチを覚えたデータが表示されていた。

「ちょ、ちょっと焔! マッハパンチなんていつの間に覚えたの!?」

『エヘヘ、あるポケモンがトレーニングつけてくれたんだ』

あるポケモン……。もしかして、あの時の……?

いや、考えるのは後にしよう。今は目の前の勝負に集中しなくちゃ。

「よし、畳み掛けるよ焔! 火炎車!」

「こちらも攻撃に転じます! ルカリオ、ボーンラッシュ!」

『ハァッ!』

『うわぁ!?』

「ボーンラッシュで追撃してください!」

炎タイプの焔が地面技のボーンラッシュを何度も喰らうのはマズイ。

この技に賭けるしかない!

「マッハパンチで弾き飛ばして!」

『くっ……!』

やった、上手くいった!

「そのまま火炎車!」

『了解!』

焔が灼熱の炎をまとってルカリオへと突っ込んでいく。

ルカリオはそのまま火炎車を喰らい、フィールドに倒れ伏した。

「ルカリオ!?」

「ルカリオ、戦闘不能! モウカザルの勝ち!
よって勝者、チャレンジャー・レイナ!」



勝った……。



『やったー! 勝ったよ、レイナ!』

「うん……。うん、よく頑張ったね焔!
格好良かったよ!」

「レイナさん」

スモモちゃんに呼ばれてそちらを振り向くと、彼女は見慣れた小さなトレーを持って立っていた。

「とても素晴らしいバトルでした。あなたはこのバッジを獲得するのに相応しいトレーナーです。
これがトバリジムを勝ち抜いた証・コボルバッジです。受け取ってください」

「ありがとう!」

もらったコボルバッジをバッジケースに入れる。これで集めたバッジは4つ。

ポケモンリーグに挑戦するには8つ必要だから、バッジ集めも中間地点だ。

「ジムバッジが4つ……折り返し地点ですね。
ここから近いのは、ノモセシティです。良かったら、次はノモセジムに挑戦してみてはどうでしょう?」

「うん、そうするよ」

次は水タイプのノモセジム……。またトレーニングを積まなくちゃね。



みんなと一緒に!



ちなみにその日の夕飯は、焔と來夢と勇人の好物で埋め尽くされた。


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