01


トバリシティ・某所――。



「アカギ様」

その名を呼んだ声に、男はゆっくりと振り返る。

「……戻ったか。首尾はどうだ?」

「まだ本来の記憶が戻ってはいないようですが、間違いありません。
あの姿、あの声……全て記憶の中にある通りです」

報告を聞いたアカギは無表情のまま静かに頷いた。

「そうか。お前はこのままあの娘の動向を探れ。
事を起こす際は追って指示を出す」

「……はい」

「心配するな。私の望む世界が完成すれば、お前の妹は解放する。
だが、もし私を裏切るようなことがあれば妹がどうなるか……分かっているな?」

彼を……ギンガ団を裏切れば、妹は無事では済まないだろう。

あの子を救い出すために、アカギの手駒として動くしかないのだ。

「分かっています……。それでは、失礼します」

一礼して部屋を退出し、自室のベッドに腰を下ろす。



「どう足掻いても避けられないのか……。
すまない、"ヘレナ"……。今の私には……"僕"には、こうするしかないんだ……」



ランプのみが灯る薄暗い部屋で零れ落ちた懺悔は、誰の声もしない虚空へと消えていった。


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