「手を出せ」

「……?」

「もう八月半ばも過ぎたからな、たまには恋人らしくしようじゃあないか。行くぞ、デートだ」

「!」


そんな文言から始まった。
雨戸もカーテンも閉めきった部屋。とうに体内時計は狂い、不定期に来るDIOによって今が昼か夜かさえわからない。そんな生活を送る承太郎は目を瞬かせる。その度長い睫毛がふるりと揺れた。

デート。
最後にDIOと出かけたのはいつだったか。後輩にうつつを抜かすほど遠かった関係が戻って来た。ずっと耐えて耐えて耐えて、自分が悪いからと矜持をその手で折り、羞恥に震え、跪いてきた。その屈辱がやっと実を結んだのだろう。tgyDIOの声は甘く、記憶からも薄れつつあった慕情が滲む。その声、その眼差しだけで心が踊るようだ


「っい、行く!!どこに連れてってくれるんだ?」

「そうだな…近くに小綺麗な喫茶店ができたからな、まずはそこに行こうじゃあないか。さ、手を出せ。そのまま表に出るつもりじゃあないだろう?」

「あぁ!」


思わず笑みがこぼれる。
外出する、ということは人目がある、ということだ。さすがに拘束具をつけたままではないらしい。そして拘束具をとることは多少なりとも『いい子』だと認められたことじゃあないのか?躾けるべき獣ではなく恋人としてDIOの隣に立てる日も遠くないはずだ。そう思うと自分は正しい事をしてきたのだという安心感が湧いてくる。承太郎は陶然と微笑み両手を差し出した。



チ、ジジジジーーッツ

ジッパーの開かれる音が響く。
続けて二回。DIOのソファーの前で数週間ぶりに承太郎の手は解放された。ずっと汗で蒸れ、洗うこともできなかってせいで皮の隙間から悪臭が漏れる。それを意に介さず果物の皮をむくようにたやすく承太郎の両手を取り出した。

これでようやく自由だ。
DIOにお願いしなくても食事もトイレもできる。外出先ではなんでも自分でできるんだ。長らく続いた抗いようのない無力感が晴れる音がする。何一つできない不自由は承太郎を惨めにし、的確にプライドを傷つけていた。

DIOは承太郎を優しく扱った。
これが当たり前だという顔で承太郎の全てを行なった。それを見る度に、本当は自分では何一つできないんじゃあないか?これが自分たちの日常だったのでは?という疑問が首をもたげつつあったのだ。しかしそれも終わりだやっとこの手で、この足で踏み出せるんだ!その歓喜に身を浸し、思うままに両手をーーー動かせなかった


「………ぇ?」

「どうかしたのか?」

「でぃ、DIO…おれの、おれの手が、動かないんだ…見てくれよ、こんなに、こんなに力入れてんのにビクともしねぇッツ!!」


はじめは呆然と、そして数秒たって現実を認識そて承太郎は絶叫した。
安堵と歓喜の間から絶望が襲ってくる
承太郎にとって両手の自由は人間の象徴であり、いい子の証だ。それが与えられなかった。与えられるはずだと確信していた故の絶望でありパニック。ようやくDIOに認められたと思ったのに、本人すら気づかぬ心の支えが奪われ混乱する。


「あァ、もう固まったのか」

「、へ……?」

「拘縮、というやつよ。骨折などでずっと拘束していると関節が固まって動かなくなる。安心しろよ…今まで通り面倒は見てやるさ」


悲痛な声を上げる恋人にあっけからんと告げた。
一度拘縮した部位は三ヶ月ゆっくりとリハビリをしなければ治らない。つまりこの夏が終わったとしても承太郎はまともな人間生活は送れないということだ。慈悲深くも残酷なことを告げるDIOの声


しかし、それでも、承太郎は安堵していた。
たとえ手が動かなくても大丈夫だ。優しい恋人が助けてくれる。そうだおれはDIOの恋人なんだ。この美しく優しい男がいれば安心だと思ってしまった。自己暗示から生まれた思慕に縋り微笑みながらDIOの足に寄りかかった。


「ん…じゃあ大丈夫、だな」

「あぁそうだとも。このDIOの隣にいればお前が困ることなどない。服を着せてやる、さっさと立て」


久しぶりに立とうとするもよろけてしまう。
前傾姿勢で這っていたため足の筋肉が衰えたのだろう。あわや転ぶ、というところで暖かいものにぶつかった。DIOだ。目をつぶり衝撃に備えていた承太郎を優しく抱き寄せるとそっと頬を撫でる


「おい、大丈夫か?…まったく危なっかしいやつよ」

「っすまねぇ………ありがとうな」


ふわりと香る薔薇の香水。
さらりとしたワイシャツの生地。やわらかな眼差しが承太郎を包む。恋人からのぬくもりに触れる。甘い時間だ。DIOの両手は愛撫するように全身をなぞり承太郎を囲みこむ。逃さぬように、逃げられぬように。白く細い指先が柔肌に埋まる度に承太郎の心臓が跳ねる。毒々しく、同時に甘美な刺激が皮膚を走る。


「っぁ……DIO………」


一転、喰らい尽くすような獣の眼。
それに射抜かれじくりと腹が疼いた。口から吐息が漏れる。このまま抱かれるのか、デートは、いやそれもいいかもしれない。承太郎は陶然と思い体をDIOにしなだれかかった。

ツプリ、と白魚の指が秘部に埋まる。
散々恥辱を受けながらも何一つ受け入れてこなかった裂け目はじゅくじゅくに濡れ、およそ処女とは思えないほど熟れていた。カッと頬を赤らめながらも不具の腕をDIOの首に回す。その耳に艶美な声が響いた。


「承太郎…お前はよくやっている……まさかここまで耐えるとはなァ……今日という日をいい子で終えられたら、この続きをしようじゃあないか…」

「、っん、ぁ……でぃ、お……」


欲情し蕩けた顔の承太郎に囁くと指をずるりと抜き体を離した。熱がわだかまる。高ぶりつつも解放されなかった欲がじくりと傷んだ。指と恥部とを愛液が伝う。メスの顔になった少女を残しDIOは部屋を出て行った。抜けた腰では追うこともできず、ぺたんとソファーに座ることなく床にへばりついた。






「あぁ、よく似合うぞ。思った通りだな」


数分後、達せぬ程度に愛撫され熟れた体に流行りの服が着せられた。白いワイシャツが発育のいい体を引き立てる。落ち着いた色合いのスカートが楚々として美しい。うっすら透けるか透けないか、いつの間にサイズを把握されたのか黒のブラジャーもぴったりだ。


「さぁ仕上げだ、足を上げろ。ショーツを穿かせてやろう」

「白かよ…おやじくせぇな」

「ならそのまま出るか?」

「まさか!…てめーが選んだやつなら、いい」


そこまで言うと照れたように顔を背けた。
そっぽを向いた承太郎の肌は赤く染まり初々しい。それに可笑しそうに笑いDIOは可愛らしい恋人の前にしゃがみこむ。ついっと右、左と足先が軽やかに持ち上がりショーツに通る。そのままぐいっと食い込み気味になるまで引き上げた。


「、っぁう!…ぁ、ん……」

「どうした?はしたない声をあげて…」


ざりっざりざりっ、と敏感にされた肉芽に布地がやすりがける。本来秘部を守り刺激を遠ざけるはずの下着が承太郎の牙を向いた。ワザとらしく、愉快そうに耳元でDIOの声が響いた。


「…ぁ、クリチンポ様が、すれて……」

「気持ちいい、と?」

「あぁ…ぱ、パンツがきもちいい……これ、だめだ…」

「露出狂と歩く趣味は無い。耐えろ。いい子ならそれくらい我慢できるだろう?」

「いい子、なら…」


背中を駆け抜けた快感にとろけながら承太郎は言葉を口内で転がした。
肉に食い込み甘い電流が走る下半身。そこに力を入れて体を支える。ロクに手入れもされず生い茂った陰毛が過敏なクリトリスに絡みつきやわやわと引っ掻いた。その度抜けそうになる腰に喝を入れて立ち上がる


「行けるな?」

「がん、ばるぜ…だから、終わったら許してくれる、よな?」

「あぁいいとも。さ、行こうじゃあないか」














一歩、一歩と歩くたびに快感が立派なクリチンポから全身に走る。
それでも先を行く大きな背中を追って必死に足を運んだ。かれこれ数十分歩いている。歩くだけ、それだけでも綿の織り目に擦られ陰毛に引っ掻かれ続けた陰核はじっとりと下着を汚す。焦らされる体。

幸いにも人気はあまりないが屋外で、いつ人がくるか分からない場所で感じていると思うとゾクゾクした。
鏡の前で『恥ずかしいのが気持ちいい』と口走った日から羞恥が身を焦がすほどビリビリと電撃が走る。はっきりと口にしたから自覚できたのか、そのように思い込んだのかはわからないが快感だけは確かだ。だらしなく蕩け上気する顔を承太郎は必死に抑え進む。


「っな!DIO、まだ、かッ」

「もう少しだ。…ほれ、見えただろう」


立ち止まった先、小洒落たテラス席のある喫茶店が見える。
それなりに人気店なのか少なくない客が入っているようだ。


「ここは軽食も美味いからな、腹ごしらえもしていこう…いいな?」

「あ、あぁ」


言われるがままに頷き大きな背中を追う。
DIOが注文をしている横で承太郎は店内に視線を走らせた。
じっとりと濡れた股が気になる。甘い女の匂いが周りに気づかれないか、心配でソワソワした。もしバレていたら、メスの匂いが漏れて、気づかれていたら。灼けるような羞恥を感じてじくりと胎が疼く。思わず両足をこすり合せる。その度に肥大化したクリが擦れてまた愛液が溢れた。


「おい、一体いつまでそこにいる気だ?」

「っあ、い、今行く」


急に自身に向けられた声にビクリと体が跳ねた。
いつの間にできていたのか、美味しそうなサンドイッチとコーヒーが二つ、トレーに乗せてDIOが待っていた。承太郎は熱の冷めないままDIOを追いかけた。

テラス席
いい具合に木漏れ日が差し込み、残暑を風が吹き飛ばす。冷房の効いた屋内と比べると人は少ないがチラホラとカップルや承太郎と同じくらいの学生がいる。やはり2メートル近い美丈夫と発育の良い美少女の組み合わせは目を惹くのか視線が集まった。


「さァ、どうぞ」

「ん、ありがとよ」


カタリ、とトレーをテーブルに置きDIOは承太郎の椅子を引いた。
グーの形に固まった手では椅子に座ることもできないのだ。極々普通のようにDIOは承太郎をエスコートし、承太郎もそれを受け取った。もはや承太郎ひとりで出来ることなど僅かだろう。しかし悲嘆に暮れる事もなく穏やかだった。


「サーモンとハム、どちらから食べたい。『あーん』というやつだ。好きな方くれてやろう」

「んー、ハムがいいな」


ゆったりとした時間が流れる午後
DIOは恋人の素直な姿に目を細め、三切れづつあるサンドイッチを指先でつまんだ。雛鳥のように口を開ける承太郎に向けて差し出し、小さな口に放り込む。


「ふ、ん……ぅ……」

「まだ食べるだろう?」


ひとつ、ふたつと食べさせる。
なにせモデルや俳優でも滅多に見ないほどの美形二人だ。人目もはばからずいちゃついているとなれば視線も直ぐには消えない。しかし一体何人の人が気がついただろう、承太郎の目はとろんと蕩けうっすら頬が赤らんでいるようだ。せわしなく足を組み替えビクともしない手は白くなるまで握り込まれている。


「っふ、ぁ…でぃお……」

「おい、こんなところで発情するんじゃあない。だらしの無い顔だ」

「あ…だって、なんか、せつねぇ……」


息をはふはふと荒らげ紅潮した、オンナの顔で呟く
DIOの手で食事を与えられる状態とワンセットで覚えこまされたクリストスへの刺激が寂しい。物足りない、と言うべきか。いつもの舐めしゃぶられるような刺激が欲しくてたまらない。衆人環視の中だというのに腰を振ってしまう。もじもじと足を動かしショーツにクリチンポを擦り付ける。

人の視線、こんなところで欲情している自分の情けなさも一層熱を煽った。鏡越しに見た発情した自分の顔。そんなだらしの無い表情を晒しているかと思うと得体の知れない電撃が背筋を駆け抜けた。


「あ、ぅ…んっ、ふ、は……」

「ずいぶんと淫らになったなァ…飲み物はいるか?」

「ん…いる」


熱に浮かれた表情のままのみくだしマグカップを待つ。
コーヒーの芳醇な香りが鼻腔をくすぐりホッと大きく息をついた。傾けられるままにゴクゴクと喉を鳴らす。たっぷり入った氷がカランと揺れた。






どれほどたっただろうか、承太郎にある程度与えるとDIOはゆったりとコーヒーを味わいリラックスしていた。
少しばかり陽も傾き客層も入れ替わった頃。
承太郎は快感に震えているのとはまた違った顔で、もぞもぞとしながらDIOを見ていた。


「な、なぁ、まだか?」

「急かすな、コーヒーぐらい楽しませろ」

「だって、その…もう、限界、で」

「待てと言っているだろう」


キュッと眉根を寄せ何かに耐えるように目を伏せる。
すでに家を出て1時間近く経過した。通説には尿の生成量は時間×体重だと言われている。しかしカフェインの摂取、そして頻繁に排泄させることで膀胱の縮小が起こり承太郎は限界の尿意を抱えていた。溜め込むための機能を削ぎ落とすように、少しでも溜まれば排尿させられていた承太郎の膀胱は150mlも溜められなくなっている。コップ一杯もない量である。


「…さて、そろそろ行くか?」

「っぅ、あ、むりだ、動いたら、漏れるッ!」


あまりに切実な声
しかしDIOはそんなことなど意に介さず冷淡に言い放つ。


「1時間も経ってないだろう。さっさと足を『出せ』」

「ーーッツ!あ、ぁああああっっっひ、」


普段から排泄の自由は無く、DIOの許可を待っていた体はどこまでも都合のいいようにDIOの言葉を解釈した。

座ったままの承太郎、しかしその足元には水たまりが出来ていく。
あたりに漂い出すアンモニア臭、一歩も動くことなく用を足し出した少女にあたりがざわめき出した。


「うっわ……きったねぇなぁ…」
「くっさーッ!どんだけ我慢してたワケ?!」
「ちょっと可哀想だよ、ほらカレシもドン引きしてるし…」


「っあ、ぁああ……でぃお……」


羞恥に耳まで赤くなる。
椅子を引かれなければ座ることもできないならば立つこともできないのだ。そもそも立てたとして握ったままの手ではトイレのドアを引くことも下着を下ろすこともできやしない。そしてトイレが男女に分かれている以上デートに行った時点で承太郎の詰みだった。

目を伏せたままあまりの恥ずかしさに鼻がグズグズ言い出した承太郎にDIOは吐き捨てた。


「…おい、これっぽっちも我慢できんのか?いい子でいる気もないようだなァ……もういい、貴様なんぞ知らん。二度とその顔をみせるな」

「ッそんな、待ってくれ、がんばるから、もっとちゃんとする。こんどは、」

「くどい」


涙で潤ませた目で追いすがる承太郎を切り捨てDIOは出て行ってしまった。
振り向くことも、未練の一つも無く大きな背中は遠のいて行く。
残ったのはじっとりと濡れた下半身と冷めたコーヒー、それと周囲からの軽蔑の目だけだった。


「ねぇアンタ、わたしの靴が汚れたんだけど」

「っあ、す、すまねぇ…」

「『すまねぇ』?ずいぶん偉そうね、おもらし女」


褐色の美女が座ったままの承太郎に近寄り責め立てる。
確かに彼女の美しい両脚の先、輝くようなハイヒールに水滴がとんでいた。女はパシャリと水たまりに踏み込むとそのまま椅子を勢いよく蹴り倒した。


「ッう、ぐ、」

「謝るんだったら誠意ってのが必要なんじゃあないの」


どれほど強く蹴ったのか、承太郎を乗せたまま倒れる椅子。衝撃から身を守るように転がった承太郎の背中に自身の尿がしみる。コンクリートブロックの上に転がった承太郎を見下ろし女は唾を吐きかける。


「ッけ、ちょっと綺麗だからって調子乗ってんじゃあないわよこのカスが。舐めて」

「っは……?」

「は、じゃなくて、アンタのションベン口で綺麗にしろって言ってるの、できないワケ?」


目と鼻の先に真っ赤なハイヒールが見える。
これを舐めろと言うのか、DIOを追わなくてはならないのに、そんな時間も無ければ屈辱的なこともごめんだ。承太郎はギロリと思わず睨みあげる。


「あら、そんな目をしていいの?白昼堂々おもらしだなんてネットにあげたら注目されそうよねェ、アンタ結構美人だし人気者になれちゃう、か、も?」


ザッと血の気の引く音が聞こえた。
救いを求めて辺りを見渡すと嘲笑や軽蔑の声が聞こえてくる。同時に自分の方に向けられた携帯電話に目がいく。どこからともなくカシャリとシャッター音が聞こえてきた。


「ッあ!と、撮るなッツ!撮るんじゃあねぇッ」

「嫌だね、…まぁそのお口でティータイムを台無しにした責任を取るってんならネットにはあげねーよォ」


絶叫するも小便まみれの少女のどこに気迫があるというのか、事もなげに切り捨てられ半分身を起こしたまま俯く。ここには承太郎の味方は誰一人いないのだ。やるしか、ない。この数週間で削られた自尊心は悲鳴を上げながらも順応していった。異常な生活に慣らされた心は追い詰められ唯一の活路を求める。すなわち支配者への恭順である。

べっちゃりと自身の尿に濡れた状態で赤いハイヒールに近づく。
そっと口から舌をのばした。


「い"ッツ!」

「『おもらし女が今からおしっこを綺麗にします』、言いなさいな。できなきゃこのままよ」


ガッともう片方の脚が承太郎の握り拳を踏みつける。
肉に埋まったヒールが鋭い痛みを承太郎に刻みつける。この屈辱を忘れさせまいとでもいうようにクッキリと跡が残っていた。


「っお、お、おもらしおんな、が、」

「女が?」

「い、いまから、……ぅ、ぅうっ、おしっこ、を、きれい、にし、ます」


屈辱と羞恥に顔を歪め吐き出した。
エナメル質のハイヒールの先に屈辱と羞恥に歪んだ顔が映る。惨めで、どうしようもない今まで見たことも無いような自身の表情にとくりと心臓が跳ねた。促されるように跳ね飛んだ水滴に舌を這わせる。地面と近くなればなるほど濃くなったアンモニア臭に鼻が痛い。震える舌先でペロリと舐めた瞬間大切な何かが壊れた気がした。ポロポロと泪がこぼれだす。拭う事もできないまま、シャッター音響く空間で承太郎は這いつくばっていた。




もうとっくに尿は舐めとっただろうにヒールに踏みつけられたままなせいで立ち上がる事もできず舐め続ける承太郎。
いっそ消えてしまいたいほど恥ずかしい。口内に残った自分の尿の味はしょっぱくてせっかくのサンドイッチを吐き戻したくなるほど酷い。とっくに飛んだ尿は綺麗になったのに開放してくれない。クスクスと聞こえる嘲笑に死にたくなった。DIOが着せてくれた白いワイシャツも黄色く染み着き、卑しく芋虫のように丸めた背中。
その背中に明るい、いま一番聞きたくない声が降ってきた。


「ちょ、ちょっとなんなんスかあんたら?!承太郎先輩、っスよね?何してるンです?」

「ぁ、じょ、すけ…?」

「あら、なにお友達?」


人混みを掻き分けて出てきた後輩を女が見つめる


「いーえ、あんたが踏みつけてるのは、おれの恋人なんでねェ。さっさとその足を退けろよ」

「へーえ、でもそう思ってるのは貴方だけじゃあなくて?この女他にも恋人がいるみたいよ。…さっき見捨てられてたけど」

「はァ?」


頭上で交わされる言葉。
真偽を問うように向けられたまっすぐな視線に思わず目を逸らした。ほんの遊びのつもりだった浮気相手、まさかこんなところで、こんなタイミングで会うなんて信じられなかった。


「マジ、なんすか…」

「ま、知り合いならなんでもいいわ。このおもらし女拾ってってちょうだい」


呆然と呟く仗助に女は言った。
最後に一つ承太郎の背中を踏みつけるとヒール音を鳴らし出ていく。舐めているうちに減ったのかわずかばかり残っていた集団も徐々にはけていった。残ったのは承太郎と仗助の二人だけ。うつむき体を起こせないでいる承太郎に呟く。

見られてしまった。
こんな醜態を晒して、見っともない姿で見つかるだなんてどうして予期できると言うのか。しかも仗助にもバレてしまった。どうなるのか、どんな反応が返ってくるのか不明瞭で不安だった。


「さっきのって、ウソっスよね…?」

「……すまん」

「…ちなみに、どっちが本命、何すか」

「その、てめーじゃあ、ねぇ」

「…へぇ」


静かすぎる。
てっきり怒鳴られるか何か、何かしらのリアクションがあると思っていた承太郎は訝しげに顔を上げる。見上げた先、仗助は、不気味に笑っていた。


「…おい、じょう、すけ……?」

「え?なんすか先輩」

「怒らねェのか…?」

「いやァ?さすがにこの状態でじゃねェ…」

ま、お仕置きは必要でしょうけど


ホッと一息ついた直後に続いた言葉に体が固まった。
『お仕置き』の名の下DIOに刻まれたトラウマ、数々の仕打ちは未だ生々しい記憶として残っている。無意識に媚びるような目で仗助を見上げた承太郎の体に妙な感覚が走った様な気がした。ちょうど鏡を見ながら『反省』した時の様な。ずくりと重くなる腰を誤魔化し目を伏せた。


「…後で詫びはいれに行く。今は、勘弁してくれねェか」

「そいつは本命を追いかけるためっスか?そう言われて『はいどーぞ』というやつがいるだなんて思ってねーでしょうねェ…えぇ?」

「仗助、たのッツ、ぐッ!」


しおらしく頼み込む承太郎の言葉が最後まで紡がれる事はなかった。
容赦の無い蹴りが小便臭い腹にめり込む。DIOは手加減をしていたのだと一瞬でわかるほど重く鋭い衝撃が走る。胃に命中した足は胃液を巻き込んでパンの滓とハムの残骸を吐き出させた。むせ混み胃液の味と痛みに歪んだ顔に追い討ちがかかっる。


「ッゲっほ、っは、じょ、すけ、」

「それで?追いかけて?知らねー野郎のちんこ咥えこんでハッピーッてかァ?…だったらちょっとぐらい可哀想な後輩くんをかまってあげてもバチは当たらないんじゃあないっスかね〜〜」


嘔吐する承太郎の前髪を掴みねっとりと囁く。
ギラギラと欲に歪んだ目は舐め回す様に承太郎を這い回る。ここまで来て承太郎ははじめてこの男が怖いと思った。いつも自分の後ろを追いかけ賑やかな少年。いや、少年だと思っていたのは自分だけだったのか、カチャカチャとベルトを外す音が恐ろしい。逃げたくても捕まれ引っ張られている前髪が痛くて何もできない。


「っい、いやだ、許して、勘弁してくれ…」

「嫌っスね。どうせ使い込んでるんでしょう?最後にかわいい仗助くんに貸してくれてもいいじゃ無いっスか。さっさと股開けよビッチ」

「ちげ、でぃおにもしてねえ、頼むから、」

「つまり処女?…そいつァいい事聞いちゃったな〜そんなこと言われて止まる男はいねーよ」


急激に迫り来る貞操の危機に震えが止まらない。
不定期でバランスの良いとは言いがたい食事しか与えられず、ロクに運動もしていない生活。そのせいで落ちた体力と不具の両手では抵抗らしい抵抗もでき無い。加えて男女の性差が大きくでた。握り拳で押しても殴ってもビクともしない。前をくつろげた仗助はそのまま承太郎を押し倒そうとする。


「っぁ、いやだ、頼む、っく、口でするから、許して、…お、犯さないでくれ……」

「口で?………ま、いいっすよ。処女はとらないでおくんで」

「…ぁ、ありがとう」


ドキドキと鼓動がうるさい。
恐怖に固まった体が動かず自分のものでは無いようだ。犯される、レイプされる恐怖に屈し口走った事が信じられない。それでも穢されるよりかはマシだ。白昼、野外で奉仕を強要されているのに思わず感謝の言葉を言ってしまう。


「じゃー頑張ってください、イタズラするぐらいはいいっスよねェ」

「あぁ、」

手を使えない承太郎の代わりにチャックを下ろしトランクスから性器を取り出した。
汗の匂いが鼻をつく。はじめて見る男のものにどうしたらいいのかわからない。ふわりと尿の臭いが漂う。しかしやらなければいけない事は分かっている。恐る恐る唇を先端に当てた。頭上高くから見下ろす仗助を上目で見るとそれでいいというように頷かれる。ぱかりと口を開けそっと頬張った。しょっぱい様な苦い様な味がする。戸惑いと不安と、承太郎自身も気づかぬ興奮。よくわからぬまま舌を動かした。



「あーうん、ド下手っスね。もっと舌使ってちゅうちゅうしながらベロベロして欲しいっす」

「…ほぉ、は?」


アドバイス通りに吸い付き舌を幹に這わせる。
だんだんと口内にしょっぱい様な液が入ってきた。感じているのかまた少し硬くなる。恐怖に突き動かされている承太郎は気がついていないが空気を抜く様にしゃぶっているその顔はひょっとこの様になり何とも無様だ。早く終われ早く、早く。そう祈りながら目を閉じフェラをする承太郎は違和感を覚えた。



「っふ、ふぁ、んら?!」

「こらこら、口離しちゃあダメでしょう。イタズラするって言ったじゃあないっスか、……次離したらぶち犯すからな」


何かが、秘部を、クリストスをなぞる様に蠢いている。
ぐりぐりと押し込む様に前後したかと思ったらカリカリとくりちんぽをショーツ越しに引っ掻き、とうとうショーツの向こうにまで入っていった。思わず叫びそうになったが低い声で脅され慌てて目の前の男根にむしゃぶりついた。

その何かは不形態の様でうじゅるうじゅると波打ちながら誰も触れたことのない花園に分け入っていく。それが大陰唇を割り開きその奥へと進む。ゾワゾワと背を這う快感に腰が揺れる。それでも自由に喘ぐこともできず拙い口技で奉仕を続ける。


「っん、ふ、ぅんンッツ!ーーっむ、ぐ、」

「…マジで下手糞だな、ちょぉっと失礼しますよォ」

「んグッ!……んぉ、むんんっ?!」


異形に嬲られ混乱する頭を掴み喉の奥まで犯し尽くす。
高い鼻筋が下生えに埋まる。一層濃くなった汗の匂いと喉の奥を突かれる刺激が吐き気を催した。しかしそれ以上に問題なのが自分の淫部だ。粘度の高いそれはすでにショーツの下を覆う様に広がっている。ぶるぶると震え鼠蹊部をくすぐりながら割れ目の奥へともぐりこむ。ガツンガツンとオナホのように使われながら未知の快感に怯え、感じていた。


「おれのイエローテンパランス…っつっても分かんねーか。承太郎先輩のビッチマンコ埋めてるそいつ、気持ちいでしょ。こんなこともできるんすよォッ」

「んんんんンッ?!ぅんっ、っぅむあ!!」


これは仗助のせいだったのか、一瞬安堵したもののぐちゃり、と陰核を呑み込まれた瞬間全て吹き飛んだ。
今までのはただの遊びにすぎないとでも教え込むかのようにずりゅずりゅと吸い、撫で回し、絞り上げる。こんな状態でフェラなど続けられるわけがない。必死で取り除こうとするもスカート一つ脱げない手では捲り上げたとて無駄だ。かえって女陰の惨状を見ることになって声が漏れる。


「っひ、や、ぁああッ!す、すっちゃ、ッぁ、ぐりぐりするなっ!ぁ、ぅ、うッツ!」

「あれぇ、やめちゃうんすかァ?まー犯されたいってことでいいんだな?」

「やっぁ、まって、ひぎゅッ!っぁ、やる、やるか、らっ〜〜〜ッツ!とめて、これ、む、ひっ!」


尿と愛液でぐちゃぐちゃのソコ、白いショーツが濡れて透けた下には黄色いスライムのようなものがうぞうぞと張り付いている。
肥大化したクリストスの過敏な根元をおうとつのある状態でこすりながら締め上げ、一層大きく勃起させる。陰核鬼頭を何度もすりあげ僅かばかりのくびれを磨く。ひとすりひとすりに承太郎は絶叫し泣き喚いた。すでにここが屋外であるという事など頭から消えているのだろう。腰は揺れっぱなしで足元は色々な液体で水たまりができている。


「さっさとしないとお口マンコじゃなくってマジのマンコ突っ込みますよーッ」

「っぁ、…わかった、ンんッツ!やう、やる、からぁ…」


真っ赤な顔でよだれをこぼしながら男根に口を近づける。
プツプツと先端に浮かぶ水滴を迎えるように舌を伸ばし鬼頭にキスをした。快感に回らない舌ではロクに刺激を与えられずただ咥えているだけになっている。しかし喘ぐ振動がイイのか無様な姿がニヤニヤと見下している。拙いフェラチオでは射精までたどり着けないのか仗助は生暖かい口内を楽しみながら承太郎を玩弄していた。


「っふぐ、んーーーッツ?!……っう、ん、んっンァッツ!…ひゅ、む、ぐ、っぁんん、」

「ヨさそうっすねェ…」


それもそうだろう。
承太郎の一番の泣き所をしゃぶられ、いたぶられ、人間には到底不可能な快楽を叩く着込まれているのだから。しかし黄色い悪意はクリだけに留まらなかった。


「ーーーーーーッツ!!!っは、や、なん、ら?」


表面を覆い突起を嬲るだけだったそれは更に奥へと侵食する。
処女膜の穴、経血の通り道を抜け、その先へ。固い膣口を何度かぐぽぐぽと前後した後一気に通り抜けた。瞬く間に子宮内に満ちる。そう、『満ちる』のだ。不定形故の暴挙。レイプされたとしても起こらない、同時に全ての快楽神経を刺激されるという暴虐。相変わらずクリストスは形が変わるほど強く揉まれ、Gスポットや人間ではありえない子宮の快感を殴りこまれる。そんな暴力を超えた快感になすすべもなく意識は呑み込まれていった。


「ーーーーーーぁあ"あああああッ!!〜〜んぎゃっ、ぁうッらめ、らこえ、むっっっ!だめらかぁっ!たすけ、じょっ、す〜〜〜っアァ!?」

「いやーこんな美人でも鼻水出るんすねェ…すっげー顔」


目の前の足に縋り付き泣きじゃくる。
甘い快楽が子宮から駆け上ったと思えば陰核包皮の下まで潜り込んだスタンドが脳を刺すような刺激を与える。すでにショーツは飾りだ。足の付け根まで濡れたそれはとっくに下着の役割を放棄している。一転、急にスタンドの動きが止まった。いや、止まってはいないのか。先ほどまでの暴淫は鳴りを潜めゆっくりとさざ波のように胎内に満ちていく。ガクガクと震え痙攣する下半身を抱え承太郎は命乞いをした。


「…も、むり、だ……ゆぅして、たすけれ、くれ……」

「呂律が回ってなくって何いってんだか分かんねーなァ。まぁ?イく事は出来たんで処女は取りませんよォ…おれにも予定ってもんがあるんで、残り数十分悶えてな」


そういうとスタスタと歩いていってします。
抜けた腰では追うこともできずじゅるりと蠢きだした粘液に身を捩らせる。黄色い粘体はゆっくりとゆっくりと快感を送り優しく承太郎を蕩かしていった。


「ん…ぉ、ぉおっ……ぁ、ぅ、っひゅ、ぁ……」


すっかり冷えぐっしょりと濡れた服が寒い
夏にもかかわらず強い風が吹くと鳥肌がたった。ひたすら無力を噛みしめる。喘ぐしかない体を抱きしめ声を殺した。『スタンド』と仗助が呼んでいたこれはどうしたら離れるのだろうか。そもそもこいつは何なんだ、そんなもの聞いたこともない。記憶を探るとずきりと頭が痛んだ。まるで思い出してはいけないとでもいうように。うぞうぞと胎の中で暴れる悪意に苛まれながら意識を暗幕に押し込んだ。






どれほど経ったのだろうか、陽は落ちあたりは真っ暗だった。
濡れ、冷えた体がじっとりとした夏の夜の熱気で汗ばんでいる。風も止み静かだ。触りたくなかったのか店員に起こされる事も、喫茶店の明かりもない。女と、尿と、髪にかけられたのか精の匂いがする。横たわった体を承太郎は起こした。

否、起こそうとしたのだ。


「っひゃうッツ?!」


起き上がろうと腹筋に力を込めた瞬間快感が走りべちゃりと液だまりに戻ってしまう。
スタンドの射程距離の限界まで優しくマッサージされ続けた子宮は十分すぎるほど性感帯として開発され、開花したポルチオ性感の衝撃が承太郎を襲う。意識の外で行われた性感マッサージは確実に承太郎の体を作り変えていた。

腹に力を込める。
それだけでイッてしまった、その衝撃は計り知れない。外部からの刺激なしで、自身の体にイカされるという異常事態に唖然とする。急に襲ったアクメに驚いた心臓がうるさいほどなっている。ハッハッと荒い呼吸のままもう一度起き上がろうとする。


「ーーーぁ、っふぐ、ぅ……」


今度は成功した。
覚悟していただけあってイク事もなく起き上がる。背中を愛液か尿かわからないものが伝った。ふ、と軽く息を吐きそのまま立ち上がる。ひどい匂いだ。ポタポタと汁が股から垂れる。ガクガクと震える足で陵辱に疲れた体を支える。そして一歩一歩DIOの元へと歩きだした。






「…ん、ぅ…っは、う……っぁ、…ふっ……」


暗いとはいえひどい悪臭を放ちながらブラを透けさせ、クリを擦り上げる拷問具となったショーツを見せつけながら歩くのは耐え難い羞恥だ。
しかし承太郎を苦しめていたのはそれだけではない。振動である。一歩、また一歩と足を踏み出す度に地面を踏みしめる振動が微弱な快感をポルチオから送る。さらに悪いことに快感に喘ぐ声を殺そうとすると腹筋が脈打ち子宮を圧迫するのだ。


(…あつい、はやく帰らねぇと、DIOに謝らねぇといけねーのに、……たり、ねぇ…)


イク事もできない炙られるような微弱な快感。中途半端に走る快楽に足が遅くなる。感じれば感じるほど羞恥歩行は長引き羞恥にすら感じるようになった体を追い詰める。うつむいたまま熱い吐息をもらし悪循環に苦しむしかなかった。




ポタポタとナメクジが這ったように足元で粘液が続いた。
もしもそれを追いかけた者がいたならばだらしのないメス顔でショーツを見せつけ歩く痴女を見つけた事だろう。ようやく見えて来たDIOの家。承太郎はホッとしたように立ちすくみ焦らされきった体に力を込めた。

今回はとんだ失態だ。
せっかく許して貰えると思ったのに、許してくれると言ったのに我慢できなかった。連れ合いがおもらしなんてしてみろ、置いて行きたくなるのも当然だろう。だから罰を貰わなくては、しっかり罰してもらって、謝って、許してもらおう。そう考えながらやっとインターホンの前にたった

承太郎の手ではドアを開くことなどできない。
ましてや既に夜なのだ。きっと鍵もかかっているだろう。握ったままの手の中指の関節で器用にインターホン鳴らした。



ザーッとノイズがなった後ブツンと繋がった音がした。
しかし反応は無く無音のままだ。
もう一度押してみる。



無音だ。
ひょっとして気がついていないのだろうか
再度押してみる。


無音、反応はない。
寝てしまったのか?いや、いつもだったら起きているはずだ。
もう一度鳴らす。


無音
既に10分は経った。承太郎の心に不安が忍び寄る。
焦りからか殴りつけるようになった。

無音
とうとう捨てられたのではないか?ずっと目を逸らしていた恐怖が脳内で叫び出す。
インターホンを押す手は震えていた。



無音、無音、無音

いったい何度鳴らしただろう。
しかし一向にDIOは出てくれない。『二度と顔を見せるな』吐き捨てられた記憶が蘇る。捨てられた、もうDIO無しでは何もできないのに、渦巻く恐怖に力が抜け玄関前で座り込んでしまう。刷り込むように呟いていた『DIOがいれば大丈夫』は裏を返せば『DIOがいなければ何もできない』と言い聞かせているようなもの。恋人の暴虐を受け、恐怖から作った逃げ道は行き止まりだった。無力に苛まれ続けた日々が鮮明に思い出される。


「…ぁ、ぁあ、DIO、DIOッツ!何でもするから、何してもいいから許してくれ、頼む、捨てないでくれッ!……あの、スースーするやつクリチンポ様に塗って、尻もいっぱい叩いてくれッ、お仕置きならいくらでも受けるからッツ!!」


息が止まりそうな恐怖に絶叫する。
狂乱し目の前の鉄の扉を殴りつける。こうでもしていないとどうにかなってしまいそうだった。罰してくれ、いっぱいひどいことをして、許してくれ、そう叫びながら叩き続ける。

そうしてしばらく。
ガチャンと鍵が開く音がした。喉が枯れるほど叫び叩き続けた手は腫れている。尿と愛液と精液に塗れ泣きじゃくった不細工な顔で開いた扉を見あげた。


「おい貴様、いったい何時だと思っている?こんな夜中に迷惑だ、とっとと失せろ」

「あ………でぃお、DIO、許して、くれ、何でもするから、な?いっぱいひでーことしてくれよ、いい子になる、から、な?」

「そのチャンスをドブに捨てたのは誰だ?……ホラ、迎えが来たぞ」

「、え?…」


暗い外に光が差し込む。
まるで後光のようだ。いや承太郎にとってはまさしくそうなのだろう。純金より眩い金髪が蛍光灯に輝いている。DIOは足元に侍り、媚びへつらいながら罰を乞う承太郎の後ろに視線を向けた。それを追って振り向いた承太郎の体が恐怖に凍りつく。


「ぁ、……なんで、ここに、てめぇ、が」

「えぇッ?恋人に『なんで』はひどいでしょー、ねェDIOサンもそう思いますよねェ?」

「全くその通りだ。わたしの手にはおえん。こいつの携帯に連絡先があってよかった、押し付ける先に困っていたところよ。任せたぞ仗助とやら」

「ダイジョーブっす。女日照りのホームレスどもに声かけたんで承太郎先輩がどんな淫乱でも満足させますよォ」


にこやかに頭上で交わされる会話に固まる。
もうDIOから離れたくないのに。このままだと仗助に連れていかれる。ホームレスにおれをどうさせるんだ。ぐるぐると恐怖が背筋を這った。仗助の声に、笑顔に、昼間の快楽を思い出す。気が狂って死んでしまいそうで、それでも終わらなかった陵辱。それとセットで焼きついた失禁を嘲弄される羞恥。かたかたと震えが止まらない。穢れきった手でDIOの足首に縋り付いた。


「いっ嫌だ!何でもするから、ここに置いてくれッツ」

「なんでも、なァ…フン、その手で何ができる?わたしの時間を奪い手をかける事か?貴様なぞ知らん。どうしてもというなら奴隷にでもなるか?え?」

「っなる!なるから、もう外には出たくねぇっ」


震える声で叫ぶ。
もうなんでもいい、どうなってもいいから怖い『男』と痛めつけ嘲笑する『外』から逃げたかった。自分が何を口走ったかその重さを理解しないまま蜘蛛の糸を握りしめる。


「ん〜DIOさんの奴隷ってんならおれは手を出しちゃあダメっすよねェ……でも本当になりたいって思ってるんすか?」

「さァな、どうだ?」

「なる、ちゃんと奴隷になるからッ!」

「じゃー証拠を見せてもらいましょうや。とりあえず中お邪魔しても?」

「構わんぞ」


スタスタと一向に開かなかった扉の奥に二人は進んでいく。
一瞬惚けた後慌てて承太郎も後を追った。背中を追いかけてついたのは浴室。ちょうど数日前にお仕置きをされた場所だった。密室でツンと悪臭が濃くなる。すっかり染み付いたアンモニア臭とメスの匂いで鼻が曲がりそうだ。


「こっちに来い」

「あ、あぁ」


促されたのは鏡の前、恥ずかしくて気持ちがいいと吐露した位置だ。汚れた服のまま座り込む。
証拠を見せろと言われてもどうしたらいいのかわからず二人を見上げる。


「どう、すりゃあ、いい」

「んーー奴隷でない、まともな人間なら絶対にしない事でもしてもらおうかねェ。例えば…マンコ晒しながら奴隷ですーって言ったり?」

「っな!………わか、った」


やらざるを得ない。
ここで折れたらこの一カ月が無駄になる。それに仗助の、あの異常な快感を与えてくる人間の元に行きたくない。DIOがいい。DIOでなきゃあいやだ。そう思いすり減り続けたプライドを手折る。


「…その、どっちか、脱がせてくれねぇか」


マンコを晒すためには脱がなければいけない。
しかし承太郎の手ではそんなこともできないのだ。自然と上目遣いになりながら助けを求める。


「はぁ?何でおれがそんなきったねーパンツ触んなきゃあならねぇのよ」

「人間様に頼む態度じゃあないな、承太郎。身分をわきまえろよ、それでもこのDIOの奴隷のつもりか?」


冷たい言葉が降り注ぐ。
弱った精神に追い討ちがかかった。確かに小便で濡れ、愛液とでにおい、惨めな姿だ。否応なしに鏡から現状を突きつけられる。


「ど、奴隷って、どうしたらいい、んだ…?」

「ん〜敬語は常識っしょ?あとは…卑猥な事でも言ってもらおうかねェ…」


卑猥な、言葉。
必死さいかんで頭を使う。しばらく考え続け、羞恥に耳まで赤く染めながらそっと口を開いた。


「お、……おれの、おしっこと、メス汁、でベトベトの、〜〜ぅ、ぅう、…くっさい濡れ透けショーツ、脱がせてっ、ぅ、どろどろマンコださせて、立派なクリチンポ様みてっくださいッツ」


はふはふと呼吸を荒く、潰れたカエルのような姿勢でおねだりをした。
今まで口にした事どころか考えたこともないような単語の羅列。自分で考え、それを二人の前で言っていると思うとクラクラした。弾け飛びそうな羞恥にドロリと膣の奥から愛液が垂れつ。しかしまだ序の口だ、奴隷である事の宣言すらしていないのだから。
DIOは承太郎のセリフに鷹揚に頷くと立たせ、着せた時と同じように脱がせる。そしてその続きを促した。その視線に操られるように膝を立て、足を開く。ムッと熱のこもった淫臭が広がった。


「〜〜〜ッツ、ぅ、おれ、はっDIOの奴隷、っです!クリチンポ様とっ、お尻をいじめて、いい子にしてくださいッツ!」


もはやヤケクソだ。
自分の声が大きく反響する浴室で叫ぶ。俗に言うM字開脚で恥部を晒し人権をかなぐり捨てた。そんな承太郎に愉快そうな後輩の声が届く。


「うっわ…でもあれだろ?本当はこんなことしたく無いっすよねェ…ドスケベな痴女ならそのご立派なクリチンポ振りながらピースとかしちゃうんでしょーけど、承太郎先輩はそんな事ないっスよね、本当は奴隷じゃなくておれの恋人になりたいんですもんね?」

「ふむ…確かにできるかもしれんがピースは無理だろう。拘縮した以上動くまい」

「あーじゃあ鏡見ながら実況とか?っまー淫乱奴隷でもなきゃしませんよね。本心ではやりたくないでしょ?人間としておれの恋人したいンすよ、やっぱり」

「どうなんだ承太郎、わたしの奴隷ならそれくらいできるな?」


地獄だ。
二人を納得させるにはやるしかない。しかしそれをやるということは自分がドスケベで痴女で淫乱奴隷だと主張するに等しい。でもやらなきゃ恋人としてまた黄色いスタンドに嬲られあの恐怖すら抱かせる淫獄に落とされるのだろう。

吐く息が震えた。
恐る恐る立ち上がり鏡の方を向く。そこにはブラジャーを尿で黄ばんだシャツから透けさせドロドロに濡れた淫部を持つメスが写っていた。散々吸引され育ったクリストスはくりちんぽの称号がふさわしいほど張り詰めている。あまりの興奮に膣口からトロッとまた汁がこぼれた。それを見つめながら腰を上下させる。クリチンポを振れといったのだ。当然見えるようにしなくてはいけない。ガバッと足を開きガニ股で続ける。


「っい、今ッツ!ぉ、おれの淫乱マンコはっ、めす汁で、ドロドロになってて、ーーーっ、よ、欲情して、くぱくぱしているッ!……そ、それで、く、クリチンポ様、もっ!ビンビン、ですっ!スケベ、な、…ぃ、淫乱奴隷だからっもう、ゆるしてくださっ、〜〜〜ぅぅう……」


大声が反響して一層惨めだ。
鏡の中の自分がひどくいやらしくて目を背けたいほどなのにそれすらできない。実況しろと暗に言われた以上目を瞑る事も許されずカクカクと陰核を揺らす。もう十分だろう。これだけ恥をかいて、それでもダメなのか?グラグラと煮立った頭で呟く。承太郎の精神は限界を迎えていた。


「…納得したか?」

「んー、ま、いいんじゃあないっスかねぇ。うん。こんな淫乱なんて彼女にしたくねーんで」


必死に腰を振る承太郎の背後で支配者たちの声が聞こえてきた。
よかった、許された。ホッと安心しながら首だけで振り向く。次の瞬間背筋が凍りついた。


「あ、でもホームレスどもがカワイソー何であの穴借りてもいいっすか?DIOサンの奴隷ならあんたに許可を取ればいいでしょう?」

「そうさな……」


腰をふり、小指ほどの陰核を揺らしながら承太郎は哀願の目でDIOを見つめる。
許されたはず、DIOの、DIOだけの奴隷なのだからそんな事はしないだろう?そんな願いを込めて熱い息を吐く承太郎にDIOは歩み寄る。無様で見っともない姿を見せつけながら擦り寄る元恋人に優しくDIOは微笑みいった。


「安心しろよ承太郎……わたしはお前が何処の馬の骨を孕もうと大切にしてやるとも、なァ?」


そしてとうとう承太郎は絶望の表情を見せた。




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