酒の飲みすぎを反省したのは、今日が初めてではなかった。 すやすやと隣で寝息までたてている黒が腹立たしい。 普段はこいつの方が起きるのは早いくせに、こういう時ばっかり俺が早いんだ。 「ヤったか。」 煙管を吹かす大将が、朝一番に発した台詞がこれだ。 隣にいた首無が口をあんぐりあけている。まあ、当然の反応だろう。 「で、黒は?」 「まだ寝てます。」 「へぇ。昨日は随分とお楽しみだったようで。」 大将はにやにや笑っているが、こちらと笑える気分じゃない。 「昨日はよぉ、月を見に行こうとしてたんだ。んでお前の部屋の前を通ったわけよ。声、聞こえてたぜ。」 「鯉伴っ!」 首無が屋敷全体に聞こえるくらいの大声で怒鳴った。多分、首無が止めなかったら大将はまだ続けていただろう。開けられた片方の目がそれを語っている。 「青、黒を起こしに行ってくれ。もう見回りの時間なんだ。」 首無が大将を引っ張りながら何処かへ行った。大将は笑っていた。 「立てない。」 黒を起こしに行った途端、黒は布団の先を握ったままそう答えた。 「立てないって言ってもよ、見回りに行くんだぞ。」 「わかっている。だが本当に立てないんだ。」 黒は床に腕を起き、ゆっくりと体を起こす。しかし必ず途中で力尽き、再びぐたりとした。 「くそっ、おい、手伝え。元々はお前が悪いんだからな。」 「ちっ、めんどくせぇ・・・。」 手招きをしている黒の所へ渋々進み、ぐいと腕を引っ張り上げた。 「っっ!!」 一瞬、悲鳴にも似た声が黒の口から聞こえた。 めんどくさかったので気にも止めず、そのまま続けた。 「ぅ・・・。」 どうやら立てないと言うのは大袈裟なんかではなかったらしい。 現に、立ち上がった途端にぐったりしながら体を預けてきた。 「お前、休んだ方がいいだろ。」 未だに震えている足を見て、素直にそう思った。 正直、今のこいつじゃ見回りしても役に立たない。 「五月蝿い・・・!!いいから連れていけ・・・。」 そうやって見栄を張る黒を見ていると、ぼんやりと昨日の光景が浮かんだ。 確か、こいつが酒を飲みすぎたんだ。 そのままふらふらしながら俺の部屋まで着いてきて、こんなことになったんだ。 そりゃあ俺だって飲みすぎた。でもこいつ程は飲んでいなかった。 p3 next>> |