「ほらよっと」
ドサドサドサッ
目の前に溢れんばかりに落とされたきのみたちを、目で追う。それからななしを見る。ななしは笑う
「クラボの実とモモンの実があったんだ。それから・・・・オボンの実?とりあえず私、他にオレンの実も持ってるし、全部食べなよ」
「・・・・・いいのか?」
「何言ってんの。弱ってる人から先に食べるんだよ?軽い麻痺状態でも毒でも駄目なものは駄目。体によくないものはきのみでなくせばいいじゃない」
「だが、お前は何一つ口に出来るものを持っていないように見える。せめて半分か、三分の一でも俺は嬉しい」
「ぐだぐだ言うな!駄目だって言ってんだろーが!さっさと食え!」
めちゃくちゃ理不尽に怒られたので、仕方なく、すごい申し訳なさがあるのは否めないのだが、全て食べることにした。どれも全部美味しかった。
そう伝えるとななしは嬉しそうに笑って「本当?全部おいしそうなものだけ採って来たんだよ。当たりだったね」と言った。なおさら自分でも食べてほしいと思った。
それからは家に帰る道がわからないというので、ななしが住んでいる町まで飛んで、どういうわけか逃がしてくれるのかと思いきや「あんた弱ってるし、回復するまでうちにいなよ」と言い出す始末。もう十分だといったが聞いてくれなかった。なんか知らないけれどななしの家ではシェイミとファイヤーがリビングという部屋で思いっきり寛いでいてびびった。あいつらは伝説のポケモンじゃなかったのか
どうやらこの家には伝説がいるらしく、シェイミはともかくファイヤーは暖房代わりらしい。伝説の威厳もクソもないな
「あら、ラティオスなんて珍しいわ。どうしたの?」
「攫ってきた」
「その言い方やめろ」
「うそうそ。真っ向からボール投げて捕まえてきた」
「それが嘘だろお前・・・・」
「あらぁ、それならラティオスちゃんは今日からあなたのポケモンになるのね!お母さん嬉しいわ。ずっと旅なんかいかないって言ってたから、ポケモンもいらないのかと思って・・・・」
「いや、ポケモンがいらないわけじゃないんだよ?ただ博士が「旅に行かないならポケモンもあげなーい!」とか言って渋りやがったから手持ちがいないだけで。あ、ついでにこの子は回復するまでの家族だから、間違えないでね」
「手持ちじゃないの?」
「伝説なんかいらんでしょ。兄ちゃんじゃあるまいし」
いらない扱いされた俺達含めファイヤーたちはいったい。
そう思いながらも最終的には今ななしの手持ちとして暮らしている。思い出話が長いとか言われそうだがそこは黙っていてほしい。
ななしと出会ってから早1年が過ぎていた
あいつは俺が回復するまで家に置くと言い出した張本人だというのに、しかも俺のトレーナーだというのに一切俺の看病などしなかった。母親に言われて「えー寒いしファイヤーから離れたくない」「あなたが連れてきたんでしょ!」「・・・・しかたないなぁ」ぐらいのノリでかろうじて、そう、かろうじて数回してくれたことはあったが、それだけだ
どんだけ自由人なんだとあの時は思った。本当に。