最初に擬人化できることを知ったときは、ショックでしかなかった。
だって擬人化なんてそうそうできるものではない。伝説だからということも関係なく、ずば抜けて、それこそもう何をトレーナーにされようが殺されようが殴られようが曲がらないほどの信頼の証なのだ。
なんだこれ、と思った。
こんなことできたって、いずれはななしと別れる日が来るだろうにと、泣きそうにすらなった。最初にななしと出会ったあの日から、もう既に一年と少しが過ぎている。ななしだって今はあやふやだが、いずれは手放すことを決意するだろう
それがいやだったんだ
こんなことならすぐにでもこの家を出て行くべきだったのに、まさかこんな気持ちになるなんて思いもしなかった
「ななしは新しくポケモンを捕まえるのか?」
「なんで?」
「なんとなく」
「そうだねぇ・・・・・まぁ、いずれはね。今すぐなんて考えてないけど、」
あんたがいなくなったら、そのときは。博士からポケモン、もらおうかなぁ
呟くななしに馬鹿だなぁと思う。俺がななしから離れるわけがないのに全く何を言ってるんだろうか。もし俺が見放された日にはななしのポケモンになるやつら全員殺してしまいそうだ
そうやって物騒なことばかりが頭の中を徘徊する。近頃の俺は変だった。
「そういえば今日は買い物行くんだって!ラティオス、せっかく人になれるんだし、一緒に行こう!」
「いいけど・・・・今日はどこ行くんだ?」
「さぁ?お母さんがチラシとか持ってるからねー。今日は多分カイナシティのほうが特売じゃなかったかな」
俺用のふわふわクッションを整えながらななしは思い出す。トイレットペーパーが安いとかなんとか言っていたなと母の呟きをひとつ口にだした。
「つーかトイレットペーパーはこの前買ったっしょ、大量に。まだ残ってるよ・・・」
「そうだな」
「トイレットペーパーよりもティッシュのほうがないんだけど。お母さん気づいてんのかな?」
「言ってみたらいいだろ」
「それもそうだね」
立ち上がり、母親のもとへいこうとするななし。それに無意識についていこうと俺も立ち上がり、数歩歩いたところでななしが振り返った。おそらく傍から離れない俺に疑問を感じているのだろう
「どうしたの?ラティオス」
「別に?」
「なんかさっきから着いてくるからさー・・・・・あっ、もしかして私のことが好きすぎて離れたくないとか!?それならそうと言ってよねー!!大好きラティぎゃああ!!」
「はぁ・・・・・・いつも言ってるんだが」
「勢いあまって抱きつくなって・・・・?」
「わかってるならやめろ!」
「だからってサイコキネシスはないでしょ!いだだだ苦しい!」