「彼氏が欲しい」
「はぁ?」
「だーかーら、彼氏が欲しいって言ってるの」
彼氏ってなんだ?番?
そう尋ねたら「ちょっと違う」といわれた。
「ポケモンでいう、番になる前のいい感じな雰囲気・・・・・」
「わからないな・・・・・番になる前の関係か?友達じゃないのか?」
「いや、うん。まぁそこはポケモンと人間の違いだよね・・・」
なんて説明しようか悩んでいるななしを横目に、なんだか少しもやもやとした気分になっている自分がいた。その彼氏とやらがなんだかはよく理解していないが、まぁつまり男が欲しいということだろう。相手がほしいのだ。ななしは。
「なんで急に」
「うーん、なんていうか、あれ。人肌恋しいっていうか、男の人に抱きしめたりしてもらいたい」
「男じゃなきゃ駄目なのか?」
「男の人のほうが体格いいじゃん。だから女の人よりも男の人のほうがいい」
いや、女の人のやわらかい体を堪能するのもいいけれどもね!
そんなこと聞いてねぇよ
とりあえずそういうことなの。寂しいっていうか、好きな人が欲しい
スルーか。俺の言葉は無視かよ
「あーラティオスで満足してたんだけどなぁ・・・・」
その一言で、そういえば最近は余計にスキンシップが激しかった気がした。なんというか、頻度?抱きつくという拘束技を使う頻度が増えていたのだ。明らかに。気のせいと思っていたのだが、どうやら違うようだ
「好きな人をつくってしまったら、お前はそいつに抱きしめてもらうんだな」
なんだか釈然としない
むぅ、とすねたような顔をしてしまっていたのか、ななしが目をぱちくりと瞬かせて俺を見る。
「俺じゃあ、駄目?」
「えっ、駄目ってわけじゃ・・・・でもラティオス、ポケモンで、」
そういった途端に、ラティオスが一瞬光った。文字通り進化するときのように、本当に一瞬ではあったが光った。
そして、私を抱きしめる。
「これでいいんだろ?」
見えたのは人間の腕だった。