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本当のことを言っただけなのに女は飛び掛ってきた。馬鹿にされたからだろうが、それでもヴィルはリンクに執着されたくないと思ったのだ。しかも、なんというか、ヴィルはこの女のことを気持ち悪いと思った

だって、当然のようにリンクを王子様というのだから。夢見る乙女が子供だったならよかった。けれどもいい歳した女がそんなことをいっているものだから、あんまりだろうと痛いものを見ているような気分でもあった

女は殴ろうとしたのか私の顔に手のひらをぶつける。いや、ぶつけようとした

しかしその手は大きく振りかぶっただけとなり、すかしてしまった手は宙を勢いよく切った。女の顔が驚愕に染め上げられて、ヴィルは小さく笑う


「そんな攻撃大したことないわね。それで本気なのかしら?」


女はカッとしてもう一発腕を振り上げる。しかし透ける

行き場のない怒りに体を震わせている女はヴィルを睨みつけた。可愛いもんだ。本当に、一般の人間と魔法使いが真っ向からぶつかって、一般人が勝てるわけがないというのに


「一発も当てきれないの?すごい惨めね!馬鹿にされてるのに何にも仕返しが出来ないなんて、夢見る馬鹿はやっぱり馬鹿だわ」

「〜〜っ!この!!正々堂々と勝負しなさいよ!魔法がなけりゃなんにも出来ないくせに!」


あら?


「今、なんて言ったの」


幻聴が聞こえたわ。魔法がなけりゃ何も出来ない?うそ、嘘ね。魔法は私の一部であって、私自身でもあるの。魔法がない私なんてそもそもこの世界には存在していないわ。ここにだっていないでしょうね

いいわ、と呟いて魔法を解く。これで相手の攻撃も当たるようになってしまったが、ヴィルは勝気な視線を睨みつけてくる女に負けじと返した。何を喧嘩しているのだろうとも思うが、一度こらしめないと、この女は帰るだなんて一言も言わないだろう


「鍛え上げられた私の力には、あんたも及ばなくってよ?」


一発先制で横腹に蹴りをいれたら、それだけで女はうずくまってしまった。弱い、弱い弱い!そんなので私に挑もうとしてたなんてねぇ?一体どんな思考回路してるのかしら?私が魔法使いだってことぐらい聞いてたでしょう

本格的に泣き出してしまった女に催眠術をかけて、それから少し立ち尽くした。するとリンクの家の扉がガチャリと音をたてて開かれる

リンクが帰って来たのだ

私はゆっくりとリンクのほうへ振り返ると、リンクはじっとこちらを見つめていた。「どうしたの?」とたずねれば、返ってきたのは質問で。


「ヴィルは」

「うん」

「リリオと、付き合ってるのか?」

「どうして?私はリリオとは付き合ってないわ。付き合ってたらのこのことリンクの家になんて来たりしないわよ」

「・・・・・・それもそっか」

「変なリンクね。そういえばこの女を返品する方法を見つけたの」


リンクは一瞬にして顔を輝かせた。泣いている女などには目もくれず、協力すると言って笑った

あぁ、これのどこがあんたの王子様なのかしら

寝ている女を見下ろして、そう思った