11 本当のことを言っただけなのに女は飛び掛ってきた。馬鹿にされたからだろうが、それでもヴィルはリンクに執着されたくないと思ったのだ。しかも、なんというか、ヴィルはこの女のことを気持ち悪いと思った だって、当然のようにリンクを王子様というのだから。夢見る乙女が子供だったならよかった。けれどもいい歳した女がそんなことをいっているものだから、あんまりだろうと痛いものを見ているような気分でもあった 女は殴ろうとしたのか私の顔に手のひらをぶつける。いや、ぶつけようとした しかしその手は大きく振りかぶっただけとなり、すかしてしまった手は宙を勢いよく切った。女の顔が驚愕に染め上げられて、ヴィルは小さく笑う 「そんな攻撃大したことないわね。それで本気なのかしら?」 女はカッとしてもう一発腕を振り上げる。しかし透ける 行き場のない怒りに体を震わせている女はヴィルを睨みつけた。可愛いもんだ。本当に、一般の人間と魔法使いが真っ向からぶつかって、一般人が勝てるわけがないというのに 「一発も当てきれないの?すごい惨めね!馬鹿にされてるのに何にも仕返しが出来ないなんて、夢見る馬鹿はやっぱり馬鹿だわ」 「〜〜っ!この!!正々堂々と勝負しなさいよ!魔法がなけりゃなんにも出来ないくせに!」 あら? 「今、なんて言ったの」 幻聴が聞こえたわ。魔法がなけりゃ何も出来ない?うそ、嘘ね。魔法は私の一部であって、私自身でもあるの。魔法がない私なんてそもそもこの世界には存在していないわ。ここにだっていないでしょうね いいわ、と呟いて魔法を解く。これで相手の攻撃も当たるようになってしまったが、ヴィルは勝気な視線を睨みつけてくる女に負けじと返した。何を喧嘩しているのだろうとも思うが、一度こらしめないと、この女は帰るだなんて一言も言わないだろう 「鍛え上げられた私の力には、あんたも及ばなくってよ?」 一発先制で横腹に蹴りをいれたら、それだけで女はうずくまってしまった。弱い、弱い弱い!そんなので私に挑もうとしてたなんてねぇ?一体どんな思考回路してるのかしら?私が魔法使いだってことぐらい聞いてたでしょう 本格的に泣き出してしまった女に催眠術をかけて、それから少し立ち尽くした。するとリンクの家の扉がガチャリと音をたてて開かれる リンクが帰って来たのだ 私はゆっくりとリンクのほうへ振り返ると、リンクはじっとこちらを見つめていた。「どうしたの?」とたずねれば、返ってきたのは質問で。 「ヴィルは」 「うん」 「リリオと、付き合ってるのか?」 「どうして?私はリリオとは付き合ってないわ。付き合ってたらのこのことリンクの家になんて来たりしないわよ」 「・・・・・・それもそっか」 「変なリンクね。そういえばこの女を返品する方法を見つけたの」 リンクは一瞬にして顔を輝かせた。泣いている女などには目もくれず、協力すると言って笑った あぁ、これのどこがあんたの王子様なのかしら 寝ている女を見下ろして、そう思った |