新しい隣人 6
「はは、起きてから何も食べてなかったもんで……何か、重ね重ねみっともなくてすみません……」
ヤバイ。
『何か』に気ぃ取られて笑うたるタイミング逃してもうたわ。何やこれ、俺が腹ん虫如きでドン引いとるみたいやんけ。
「あー……ハハ! しゃあないやろー? そんなん。せや、余りモン押し付けるみたいで悪いねんけど、良かったら昨日頼んだったピザん残り食べる? 夏希ちゃん」
「へ……ちゃん?」
うわ、自分こと指さしてめっちゃポカンなっとるわ。しゃーけどここはごっつフレンドリーにしとくんが吉っちゅー話やろ。
「あっはは! 私、『ちゃん』を付けて貰う歳でもないですよ? あと数年も経てば三十路ですし」
お、笑うた笑うた。この気取らん感じ、楽そでええわ。
「ええ!? 全然見えへんなぁ! しゃーけど女の子は幾つんなっても女の子でええ思うでぇ?」
俺んとっちゃ三十路も四十路も、下手したら80のバアサンでも『女の子』なってまうねんなぁ……何やえらいフクザツやわ。
「あはは、まー女の子ってキャラでもないんですけど。でもせっかくだから、平子さんが食べないんだったら……頂いてもいいですか? ピザ」
「おーええで! ほな取って来るから待っといてや」
「ありがとうございますー」
しっかし何やねん、あの『謎の物体X』は。虚とか邪なモンちゃうし、明確な霊圧いう感じもせえへん。もっと曖昧で、朧で……何やこう、存在が安定してへん感じがめちゃめちゃ気色悪いねん。
――しゃーけど、その『謎キモイX』の正体はすぐに分かった。
適当な皿に乗っけてラップしたピザ渡したれば、夏希ちゃんがお礼に桃をくれるやら言いよって。今時こない『ご近所付き合い』みたいなん珍しなぁ思いながら、待ってて下さい言われた俺は玄関で彼女を待っとった。
暇やし、玄関から奥ん扉までの空間ぐるーっと見回してみる。
造りは俺んとこと線対称な感じやけど、夏希ちゃんの言うた通りあんまし女の子いう感じの部屋やない。古地図のレプリカみたいなんが貼ってあったり、玄関にわっさー生えとる観葉植物とか、何やサファリ? みたいな雰囲気やねん。
意外と個性的な子ぉなんかも? 思いながら観察しとった。時やった。
な゛ーご
「!?」
何や自己主張強い声しよったで思うた次の瞬間、奥ん部屋から夏希ちゃんが言いよった言葉に俺は耳を疑うた。
「あっ、こらキスケさん! そっち行っちゃダメ!」
き、喜助やとぉぉお!?
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