新しい隣人 5
今回の『滞在場所』はおとつい決めた。何回目か数えんのもアホらしなって、数えんの止めて、それから何年経ったんか。
拠点変更ん度に関わった人間の記憶操作して、移った先でまた、チョイチョイ操作する。条件は田舎過ぎず都会過ぎひん町で、アジトになりそな閉鎖施設みたいなんがあって――あんまし周りに、霊力の高い人間がおらん物件。
候補は4つやった。
リサが見っけたテラスハウスは女同士に丁度ええっちゅーことであの3人でシェア。
広いスタジオタイプのワンルームは、鼾が気になれへん者同士の羅武とハッチが。
ほんでもって部屋に螺旋階段のあるメゾネットのマンションがええ言うローズの、家賃折半に応じたんが拳西。
何でもええ思とった俺は、偶然見っけたこの川沿いのアパートに決めた。古いけど造りはしっかりしとるし、2LDKにして家賃は破格。無論、住人はフッツーの人間ばっかで無害なんも調査済み。いたって平和や。
部屋はふたつ空いててんけど、飛んだりを見られるリスクは少ない方がええ。しゃーから最上階の5階に決めた。ここ何年か誰かとシェア続きやったし、たまのひとり滞在いうんも悪うない。
不動産屋サンに鍵貰うた時、隣の川村サンいう人が主並に長く住んどるから、分からんこととか色々聞いたらええて言われた。今、俺ん前で頭下げたまんま「頼むから笑うたってくれ」っちゅー切実なオーラ発し続けとる、お団子頭の女性や。
何やどっか抜けてそうやけど、そこそこの別嬪サン。まーええ人そうやわ。
しゃーけど一個だけ、誤算やった。
扉が開くまで気ぃ付かれへんかったけど、この川村夏希サンいう人の部屋――何かおる。
- 8 -
[*前] | [次#]
しおり
ページ:
章:
Main | Long | Menu