Memo
▽市丸ギン『夢見桜』:後書き
今回は梶井基次郎さんの小説を絡ませ、市丸隊長と数奇な再会を果たした古風な平隊士を夢主とし、思い切った雰囲気に挑戦してみました。
書いていて、日本語って本当に奥深いものだなぁーと改めて思いました。
ざっくばらんに言ってしまえば、要するに桜の下に自分の亡骸を埋めてくれた市丸さんに半ば神格化に近い憧れを抱いている夢主と、夜桜を見に現世に来た市丸さんが、肉体関係を持って秘密の共有までする流れ、なのですが。
例えば「情を通じる」は、男女が「こっそり」肉体関係を持つという含みのあるニュアンスで、けれど不倫のような不貞・不義といった要素まではハッキリ含まないビミョ〜〜〜なラインの言い回しだと私は思うのです。
故に秘密の共有を含めて「夜桜の下の秘め事」とするに妖艶さの引き立つ表現かなと。
でも反対に昭和3年という時分の梶井さんの作品は、かなり生々しい表現が故に桜の美しさと屍体の対比がより一層鮮明に感じられ、人間の感性って面白いなーと痛感させられます。
しかしそれは理性、羞恥、恐怖といった何処までも人間主体の感覚で、生物全体から見たら死体が桜の下に埋まってようが、海に浮いてようが、死体となった時点で否応なく他の生物の食料と化すわけで。
一見はホラーめいた都市伝説的なそれも、視点の置き方ひとつでガラリと見え方が変わる。その両方を死神の位置づけに絡めたら面白いかな、なんて思ってみました。
故に3ページに投入した小説の内容は、今回のお話に合わせ私が勝手に要約したものです。今後、原作の市丸さんの背景の描かれ方次第では、まるでしっくりこないお話となるかもしれませんが(笑)
受け取り方は色々でしょうが、一応書いた本人としては……。
市丸さんは夢主に一目惚れすると同時に、しきりに「綺麗」と言われることにある種の苛立ちを覚えた上で性行為に及ぶものの、彼の事情を知って尚「綺麗」と言い切る彼女に対して確固たる愛情を抱くようになり。
だからこそ事情を抱えた自分のまま、彼女と性行為を重ねることはしない、というような心理イメージで書きました。
単純に100年前だと明治43年となりますが、多少なり時代の変遷が混じったとして「口調は雰囲気」と、その正確さについては生温くスルーして頂けるとありがたいです。
ともあれ桜が散り切る前に上げられて良かった! それと、こういう設定なら恥じらいのある女の子も何とか書けるかもという、新しい自分を発見できて良かった!
[10/4/8 Thu 20:57]
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