ニャンニャンにゃん
雪の降り積もる、羽生蛇村。
雪が音を吸収して、ひどく静かなこの村に、姿を潜めるように佇む宮田医院には、いつもと違い、『診察中』の札はかかっていなかった。
「………あれ?」
そして、そんな事を露とも知らずに、宮田医院へとやってきた、間抜けな求導師。
首を傾げて、『休診中』の札を見つめる。
「あれ…………?」
再度、呟かれた言葉も、降り積もった雪に吸収されていった。
困った様子で、オロオロとせわしなく、ドアの前を右に行き、左に動く。
しばらくその動きを繰り返しているうちに、真っ黒な求導師だけだった、真っ白の風景に、一人の女性が入ってきた。
「牧野さん?」
「…………ぁ、美奈さん…」
小さな買い物袋をぶら下げて、声をかけてきた美奈は、いつものナース服ではなく、女性らしい私服に身を包んでいた。
「あの、今日って……休診なんですか…?」
恐々と、求導師は問いかける。
「ええ、先生が、お風邪らしいんです。」
「………風邪?」
ピンポーン
宮田の家のインターホンを、震える指で牧野は押した。
「……………………」
反応は、ない。
ピンポーン
もう一度、おしてみる
「………み、宮田さーん?」
返事のない宮田を不審に思い、もしや倒れているのでは、などという発想が牧野には浮かんだ。
「入りますよー?」
ガチャリと、冷え切ったドアノブに手を伸ばして、捻る。
当然、こんな田舎村で鍵を律儀にかけるなんて事も無く、案の定鍵はかかっていなかった。
慣れない様子で、靴を律儀に揃えて、牧野は静かに家に入る。
「宮田さんー?」
記憶をたどって、宮田のベッドルームを探す。
「宮田さん……?」
「っっ!?牧野さんっ!!!?」
どうやら牧野の記憶力も、そこそこあったようで、中に入ると、ベッドの中から、宮田のくぐもった声が聞こえてきた。
珍しくも、焦った様子の宮田が気になるが、今はとりあえず、容態が心配な牧野は、宮田の方へ近づく。
「来ないでください。」
冷静さを取り戻した宮田は、牧野の気配を敏感に感じ取って、近づくことを堅く拒んだ。
しかし、時すでに遅く、牧野はもう、宮田が被る布団をひき剥がそうとしていた。
「帰って下さい。」
「だ、……ダメですっ!!また無理しては、困りますっ!!」
「セクハラで訴えますよ?」
「ぇぇえ、私、何もしてませんよね!?」
「存在が……」
「なんだか、私泣きそうです……」
布団を互いに引っ張り合いながら、会話で兄弟喧嘩をする。
しかし、とうとう宮田が根負けして、手が離れる。
「ごめんなさいっ!?」
力をこめて引っ張っていた牧野は、反動で後ろ向きにひっくり返った。
もはやクセとなった、謝罪の言葉を悲鳴としてのせて、転ぶ。
「い、いたい…………」
痛みで落ち込む牧野が宮田を見上げる。
すると、そこには、当然だが、宮田がいた。
しかし、宮田でないと言ってしまえば宮田でない。
その姿に違和感をのせて、宮田はベッドの上に座っている。
「………なんですか」
不快そうに睨んでくる目は今はとりあえずスルーしようと牧野は意識する。
そのようなことよりも、違和感の方が、今の牧野には重要であった。
「………ネコ?」
宮田の柔らかい、少しクセのある茶色がかった髪から覗く『違和感』は、どう見ても、間違いなく、ネコにあるべきそれであった。
「だから嫌だったんだ……」
「ネコ…………?」
後ろからは、滑らかで細長い尻尾。
「…………ネコ?」
「何回言う気ですか。」
『違和感』の衝撃は大きかった。
「ふわぁー、やっぱり本物ですねぇ」
ゆらゆらと動く尻尾を牧野は、興味深そうに、目で追う。
「偽物の方が良かったです」
「す、すいません……」
嫌そうに吐き出す宮田に、何をしたでもないのに、思わず牧野は謝った。
「理由は分かってるんですか?」
話題をなるべく、良い方向に持っていくべく、牧野は聞いた。
「石田さんか、淳様か、須田か、だいたいその辺りでしょう」
「だ…だいたいって……」
こうやって話している時も、ゆらゆらと宮田の尻尾は動く。
ふと、触りたい衝動に駆られ、牧野は尻尾へと手を伸ばす。
「あいたっ!!」
と、ペチンと、宮田は器用に尻尾で牧野の手の甲を攻撃した。
「ああ、すいません、いかんせん慣れないもので」
「わざとでしょうっ!?」
しれっと言い放つ宮田に、まゆを下げながら、牧野は半べそをかいて、抗議の声をあげた。
「尻尾、触りたいです」
「私は嫌です」
「うぅ………」
宮田の無意識の間にも、尻尾はゆらゆらと動き、牧野の目に入ってくる。
「とりあえず、原因探しに行きましょう」
なるべく尻尾から気をそらすために、宮田の顔だけを見て、牧野は言った。
「一人でいってきて下さい。」
「ですよねー。」
いくらなんでも、この姿での外出は、ダメだとわかる牧野は、宮田の言葉を珍しく素直に飲み込み、一人で外に出て行った。
「宮田さーん、戻りましたー。」
1時間後、牧野は一度インターホンを押してから、宮田の家に再度入った。
「み、宮田さぁぁん………」
宮田の部屋に入ると、問題の本人は、優雅にベッドに寝転がって、医学書を読んでいた。
「ああ、どうも、何か分かりましたか?」
自分のことであるにも関わらず、人事のように聞いてくる宮田の質問に、牧野は肩を落とす。
「すいません…何も………」
「そうですか」
宮田もだいたい予想はしていた為、牧野の返答に特に驚くことはない。
「あ、でも、須田君からコレをもらいました。」
そういうと、牧野は行きには持っていなかったビニール袋をガサゴソと探った。
中から手を出す。
手には茶色の棒状の物体が握られている。
「マタタビらしいですよ」
「………は」
宮田は、マタタビの4文字を聞くや否や、牧野から離れた。
「牧野さん、それ持って近寄らないで下さい」
警戒心たっぷりの目で牧野を睨んでくる宮田。
「え?マタタビ嫌いなんですか?」
驚いたように牧野は聞く。
「良いから近寄らないで下さい」
牧野が一歩近寄れば、宮田は二歩離れていった。
「けど、何のニオイもしませんよ?」
クンと自分の鼻に、マタタビを近づけてニオイを嗅ぐが、特にこれといった感想もないほど、無臭だった。
「ほら、何のニオイも……」
「!!?」
一気に宮田に近寄って、顔のそばにマタタビを近づけた。
途端に、宮田の膝から力が抜けて、牧野にもたれかかる形になった。
「み、宮田さんっ!?大丈夫ですかっ!!?」
自分の顔のすぐ横に、宮田の顔があり、牧野は顔を赤くして慌てた。
「はっ……あんた、本当にロクな事しませんね」
耳元で熱い息を吐きながら、宮田は忌々しげにつぶやく。
「す、すいません……?」
ワケが分からず、牧野は謝ると、もたれていた宮田をとりあえず、立たせようと試みる。
「た、立てますか……?」
「無理…です……」
依然と体制は変わらず、牧野は、困り果てる。
すると、ふと宮田の尻尾が目に留まった。
(今なら触れるかも)
どうしても気になる牧野は、宮田に内心で謝罪しつつ、手を尻尾に伸ばした。
「んに゙っ!?」
ギュッと掴むと、宮田はびくりと反応して、毛を逆立たせた。
「わぁー、モコモコなんですねぇ………」
フワフワとしたそれを、牧野は、先だけいじったり、根元から撫でるように触ったりして楽しむ。
「ふ…ぁっ、ひっ、牧野さんっ!!」
尻尾をいじられるたびに声をあげて、宮田は牧野の背中にしがみつく。
「はい、何ですか?」
牧野は、宮田の顔を覗きこみながら、返事をする。
「はっ………も、さわらなっ、で、下さっ………」
目元に涙を浮かべて、宮田は牧野に言った。
「み、宮田さん、気持ちいいんですか?」
「ちがっ、馬鹿じゃないですかっ!!?」
牧野の言葉に、宮田は全力で否定の言葉を返すが、それでは、YESと言っているようなものだった。
ドサリと、力の入らない体を押し倒される。
服を手早く脱がされ、ブルリと寒さに震えた。
「宮田さん……」
深く口付けられ、脳を犯されるような感覚が体を巡る。
「…っ…牧野さん……ふぁっ!?」
仕方なく、身を任せようとしたとき、またガシリと牧野に尻尾を掴まれた。
「せっかくですし、いれてみましょうよ」
といって、笑顔で尻尾を見せてきた。
「……は?」
宮田は言われた言葉を理解しようと努めたが、マタタビのニオイが充満したこの部屋では、上手く思考が定まらない。
「ひ、っ!?ぁぁぁあっ!!?」
気づけば、一気に後口に尻尾が入れられた。
今までに体験したことのないような快楽が宮田を襲う。
「ふぁっ、ひっ!…ゃっ!!」
「どうですか、宮田さん?」
「ゃ、気持ち悪いですっ!!」
必死に尻尾を出そうと努力するが、牧野によって、無理やり入ってくるそれを出すことは叶わない。
「ひっ、………まっ、ぁっ、ーーっ!!」
早々に白濁を吐き出すが、挿入は止まらず、射精したばかりで弱い粘膜を容赦なく出し入れされる。
「ふぇ、ゃっ!!また、イっ!!」
再度射精をして、牧野の背中にしがみつく。
爪で引っかかれ、牧野の背中に傷がつく。
「宮田さん、いれますよ?」
「はっ!?このままは、ムリでっ!!!ぁぁぁっ!!」
宮田の制止も虚しく、尻尾と共に牧野が入ってくる。
「ひ、ぁあ、もっ!……やらっ!!!」
マタタビと快楽のせいで、上手く呂律が回らないのか、いつもより舌足らずな声で、宮田は叫ぶ。
辛いほどの快楽に、耐えられないように、涙を浮かべて、宮田は声をあげる。
「はっ……宮田さん、一緒にイきましょう…」
「ぁ…ひ、っ!!ふぁっ!!」
牧野が律動を早くする。
「ひ、ぁ、ぁああああっ!!」
一際大きな声を宮田は射精する。同時に牧野も宮田の中に精を吐き出す。
一呼吸置いて、また牧野は動き出した。
「もっ、ムリです!」
いやいやと首をふる宮田をよそに、牧野はまた律動を再開した。
(ああああ、もうっ!!)
あと何ラウンドするつもりなのか、宮田には数える気力も無かった。
ニャンニャンにゃん
だから
会いたくなかったんです!