気づいてますか?






side:美耶子







あー、もう、イライラするっ!!

恭也のそばにいる警官がよく言う、リア充爆発しろっ!!ってこういうのを言うんだ、絶対っ!





「美耶子。これ、食うか?」

「いらない、汚い、近寄らないで。」

「辛辣っ!!」


いつも通りに交わされる、私と淳の会話。

自分で言うのもなんだけれど、このシスコンバカ、どうにかした方が絶対世のためになる。

誰か早く殺せ。

幻視を使わなくても分かる、羽生蛇独特の髪型と気持ち悪い顔面は、想像するだけで……………嫌だ。


「じ、じゃあ、どこか連れてってやろうっ!!フルーツケーキとかどうだ?好きだもんな美耶子っ!!」

フルーツ…ケーキ……

物で釣ろうとするなんて、何てヤツだ。

私がそれで、淳みたいなバカに対して笑うとでも思ってるのか?このアホは。


……た、食べたいなんて思ってないんだからなっ!!



「……………いらない」

「……………」



…そんな落ち込まれても行けないものは、行けない。だって今日は……

「今日は、亜矢子と料理するから」



そう、先約が入ってるのだ。


何週間か後にある、馬連多隠泥とかいう、恭也にチョコレートを渡す日に備えて、今日は亜矢子に料理を不本意ながらっ!!おしえてもらう。

あくまで、不本意ながら、だっ!!私は別に良いと言ったのに、亜矢子の奴がうるさいからだっ!!



「へっ?亜矢子と………?」



間の抜けた淳の声。
この様子だと、多分亜矢子は、淳には言ってないんだろう。
まあ、言う程のことでも無いしな



「僕、聞いてないんだけど。」



どうして、不満げなんだ。


「亜矢子が言わなかったからでしょ?」

「うっ、ま、まあ……そうだけど…」


言葉をつまらせる淳。

何か反論しようと、必死に言い訳を探してるみたいだ。



「か、神代家なら、当主に予定を伝えるのは当然だろうっ!!?」



いや、知らない

っていうか

「亜矢子は子供じゃないんだから、そんなの、いちいち伝えないに決まってるじゃんっ!!」

「そ…そうだが、いや、違うっ!!お前はどうして、伝えないんだっ!!ってことだっ!!僕は亜矢子じゃなくて美耶子が心配なんだよっ!!」

「やだキモチワルイ」



嘘でもそんな気持ち悪いこと言ってほしくない。

しかも、そんなことを言っているうちに、もう待ち合わせの時間になっちゃったし。


「私、もう行くから。行こ、ケルブ。」

「ちょっ、美耶子っ!!どこ行くんだっ!!」

「材料買いに行くのっ!!」

「ぼ、僕も……」

「絶対ついてこないでっ!!」


ああ、もう、本当に、ムカつくっ!!







「美耶子、何か好きな物買ってあげるから選びなさい。」


ポンと、あたまに手を置かれる。


亜矢子との材料調達も終わって、少し疲れた私が、ぼうっとしていると、亜矢子は突然そう言ってきた。

ケルブの視界を見ると、私が見ていた方向には、ちょうど果物屋がある。


「べ、別に食べたくなんてないぞ……」

「良いから早く選びなさい」



確かに、旨そうなフルーツを見てたら、食べたくなったけど………
けど、別に買って貰うほど、欲しくはないっ!!…と思う。
けど、買ってくれるなら……



「………キウイ…」

「キウイね。」



うー…………なんだか、子供扱いされた気分だ…



「…なによ」

「別に…」



亜矢子の探るような視線を感じながら、無視を決め込むと、溜め息が聞こえた。



「ほら、キウイ。自分で持ちなさい」

「ん。」



ガサリとビニール袋の音がした方に手を伸ばす。
手渡された袋を握りながら、亜矢子と並んであるく。



亜矢子は、どうして淳なんかのことが好きなんだ?ただの変態なのに。

だいたい、さっきだって、淳は亜矢子が気になるくせに、私を盾に言い訳してたし。


バカだし。


「亜矢子はどうして淳が好きなんだ?」

「なによ、いきなり。」


すごく嫌そうな顔で見られる。



「だって、淳、バカだぞ?ウザいし。」



亜矢子に怒られること間違いないけど、バカなんだから、しょうがない。

「まあ……確かにうざいわね、鈍いし、バカだし、シスコンだし、無駄に態度大きいし。」

「私はそこまでは言ってないからなっ!!」



亜矢子……絶対淳のこと嫌いだろ……





「けど、好きなのよ。」





困ったみたいに、亜矢子が笑う。



「ふぅん………」



きっと今、亜矢子は私が幻視をしてないと思ってる。

言ったら、きっとこの笑顔は無くなる。

なんだか、何となく、すごく勿体ない気がして、私は口を閉じた。



「ほら、行くわよ。早く帰らないと、淳様の機嫌、また悪くなるわ。」



手のひらを取られる。


私よりも少し大きい手のひらに包まれながら一緒にあるく。



「あ、淳だ」

「あ。」

「おい亜矢子!遅いんだよっ!」





あーあ、イライラする。

バカみたいにイチャイチャして、
バカみたいに笑いあって、さ。






気づいてますか?
   
鹿!



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