いつでもどこでも






「宮田さん、ヤりましょう」

「…………ああ、石田さん……自殺願望があったんですね、知りませんでした。気づけなくてすいません。」

「ちょっ、宮田さんっ!笑顔は可愛いですけど、ネイルハンマーを下ろしてくださいっ!!それは殺人の為の道具ではありませんっ!!」








家に来て、早々にいきなり言い出した石田の言葉に、宮田は笑顔で答えて、ネイルハンマーを振り上げることしかできなかった。


平日の真っ昼間になって、暖かい木漏れ日が差し込める、この宮田医院は、石田が来る前には、非常に穏やかな時が流れていた。

正月も過ぎて、寒さで外に出たがらない患者の大半をしめる老人達は、病院に行くのも億劫なのか、全くと言って良いほど、来ていない。

神代の使いとしての仕事も、この日は夜のうちにやっておいてあった。

その為、宮田がやることと言えば、穏やかな時を、本を読むことで満喫するくらいのことだった。
珍しい日もあるものだと、上機嫌の宮田を訪ねたのは石田。


石田の方はというと、慣れた様子で、昼休み中『午後の診察は13時からです』と書かれた宮田医院の紙をサラリと無視して、平然と病室に入り込み、目的の人物にさっそく、と言わんばかりの速さでただ一言『ヤろう』とだけ言った。



「脳に蛆虫でも、わいているんじゃないで…」

「グロいですから、止めて下さいっ!」


想像でもしたのか、顔を青くさせて、石田は、宮田の言葉を制止させた。

言葉を遮られた宮田はというと、不服そうに石田の方を一睨みしてから、白衣のポケットに手を突っ込む。


「なんだか、無性に今日はしたい気分なんです。」

「知りませんよ。」



宮田だって、そんな、石田の気分で、犯されていては、たまらない。

そばにいた石田と距離を置くために、宮田はいた場所から一歩、後ろに下がった。


石田は、そんな宮田と距離を縮めるべく、一歩前に進む。


「近寄らないで下さい、変態。」


言いながら、宮田はまた一歩、石田から離れる。


石田はといえば、二歩、宮田に近づいた。


「なんか、そこまで言われると、泣けてきます。」


軽口を言いながらも、離れてく宮田との距離をジワジワと石田は縮めていく。

石田にしか注意の向いていなかった宮田は、気づけば後ろに、病室のベッドがあった。



しまったと思った時には、時すでに遅く、視界が反転する。


目の前には、天井と石田の顔があった。


「警察官舐めちゃあ、いけませんよ、宮田さん。追い込みは得意です。」

「バ…………んっ…ふっ………」



宮田をベッドに沈めた石田は、勝ち誇った笑みを顔に浮かべると、悪態を吐こうとする宮田の唇を塞いだ。


抵抗しようにも、いつの間にか腕をベッドに押さえつけられていて、それはかなわない。

病院にいる美奈や、他の患者が来るかもしれない、という可能性があることは、宮田の最大の不安要素だった。


「はっ……石田さん、ここでは絶対イヤです。」


やっと、解放された唇で宮田は言う。


「ああ、大丈夫です!ちゃんと鍵かけましたからっ!!」


何が大丈夫なのか宮田には分からないが、石田は用意周到にも、鍵をかけて入ってきたようで、自慢げに、それを宮田に告げた。


「声が漏れたらどうするんですか。」

「宮田さんが頑張るんで無問題ですっ!!」
そう言っている間にも、サクサクと石田は、宮田の服を脱がしていく。



露わになって、胸の飾りを舐めると、小さく甘い声が宮田からあがった。


宮田の蕾に指を差し込んで、解すように、優しく中をかき混ぜる。


「宮田さん、寒くないですか?」

「寒いと、ぁ……言ったらアナタは何か対処、するんです……か…」


眉根を寄せながら、宮田は石田の方を睨みつける。


「俺の体温、分けてあげますよ」

「…ぁ…っ…………気持ち、…悪いです」


指を2本、3本と増やして、グチャグチャとかき混ぜながら、石田が言えば、すぐに悪態が帰ってきた。


「ふ………ぁっ!!?」


石田が、宮田の弱い所を引っ掻くと、普段よりも高い声が、宮田から上がる。

それに、満足そうにすると石田は、その場所を軽くつついたり、トントンと指で叩いたりした。


「ぅあっ!!……ひっ、ぁ、………ァ…んっ」


宮田はビクビクと体を震わせて、石田の服にしがみつきながら、素直に反応を返す。



涙を浮かべながら、声が上がるのをたえる為に唇を強く噛んだ。


そんな、必死な宮田を見ながら、大変だなあ、などと石田は人事のように考える。


「あんまり強く噛むと、血、出ちゃいますよ」


手のひらで、唇をなぞって言う。


「ふ………ぅ、るさいですっ!!…」



(か、可愛いっ!!)



宮田は、石田を強く睨むが、顔を赤くして、涙を浮かべながら見られては、石田にとっては逆効果で、テンションが無駄に上がるだけだった。


「宮田さん………いい、ですか?」


解れてきた中から、指を抜いて宮田に問う。

勝手にしろ、というように、ぷいと横を向かれたが、石田は宮田に軽く口付けてから、猛った自身を宮田に入れた。


「ひっ……ぁ…ぁぁあっ!!」


指よりも何倍も質量のあるものを入れられ、宮田は大きく声をあげた。


「宮田さん、声、漏れちゃいますよ?良いんですか?」


石田がイジワルをするように言えば、宮田は懸命に声を抑えようと、努力をする。

シーツを握りしめて、強い快楽に目を瞑って耐える。


「ぁ……んっ、ふ…………」


切なそうに眉を寄せる宮田は、ひどく官能的で、石田の欲を煽る。


「宮田さん、たまには体制変えましょう。」

「……ふ……ぇ?…ひっ、ぁああっ!!」



なんとなく、いつもよりイジワルをしたくなって、石田は、体を反転させると、宮田を自分の体の上に乗せた。

いわゆる、騎乗位の形になった宮田は、いつもより深い挿入にたまらず、声をあげて、石田の胸に手を置く。


「ゃ……ひっ!!…………ふか、深いですっ!!」


焦って、逃げようと腰をあげるが、快楽で上手く力も入らず、自分の体重でさらに深く入っていく。

宮田の腰を掴んで、下から突けば、声にならない声があがった。


「宮田さん、気持ち良いですか?」

「はっ、ぁ………わか、なっ…」


片手は胸の上にのせて、もう片方の手で声を抑えようと口元を塞ぐ。
性的な涙の浮かんだ目で、石田を見下ろしながら、ひたすら強い快楽から耐えようとする。


「はっ、石田さっ…………待っ、ぁっ!!」


逃げようとする腰を押さえつけて、更に深く入れる。



その時、部屋の外から足音が聞こえた。



びくりと、二人して震える。


「せんせー?いらっしゃいますか?」


美奈だった。

コンコンとノックしてから、可愛らしい声で宮田を呼ぶ。


石田はというと、心臓がバクバクと言うのを感じながら、体重の軽い宮田の体を持ち上げて、挿入をギリギリまで浅くする。


「せんせー?」


いつもと違い、返事のない宮田を不思議がって、美奈がもう一度、宮田を呼ぶ。




ガチャガチャと、ドアノブが動く。




「あ。」


びくっと、宮田が体を震わせた拍子に、するりと持ち上げていた体を離してしまった。



「ぁ、―――――っ!!?」



突然、一気に石田が入ってきて、声をあげる宮田の唇を慌てて石田は塞ぐ。


宮田が達して、きゅうと中が締まり、石田も宮田の中に達してしまった。


「ふっ、ん、――――――っ!!」


中に放たれた熱さに、宮田が震える。


「うーん……先生どこいったんだろ?」


美奈の足音が遠ざかっていく。


「ふ、はっ!!は、はぁ……っ…はぁっ」


口付けから解放された宮田は、足りない酸素を一気に肺に入れる。


「いやー、ギリでしたね。」


ドアの方を見ながら、石田が言うと、宮田は思いっきり石田を睨みつけた。


「この………変態」


地を這うような、低い声で宮田は言い放つ。

石田は、笑いながら宮田に返した。


「まあ、あれですよっ。見つからなかったから、結果オーライということでっ!!」

「……………殴りますよ?」








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