注意!
宮田と牧野が和解(?)した後の話として掲載しております
現在Act.5の時点で、本編の季節は春になっておりますが、こちらは、季節を流星群の都合上、冬としております
ご了承下さい
一週間前 17:30
『それでは、明日の天気を、〇〇アナウンサー、お願いします』
『はいっ!!えー、明日の天気は、こちらお台場からお伝えいたしますっ!!』
「おい、須田。テレビ見てないなら、切るぞ」
羽生蛇高校付属寮
放課後とも呼べるこの時間、授業が終わって、全員で夕飯を食べるまでの間、羽生蛇高校の生徒達がやることは、
数限りなく、学校に残って話すものや、テレビを見るものや、ゲームをプレイするものなど、
それぞれが思い思いのやりたい事をしている
かくいう須田も、その一人で、今は石田と、新しいゲームを二人で協力プレイしていた
せっかく点けているのに、誰も見向きすらしない、無人のテレビは、虚しく今日のニュースを伝えており、見かねた淳は、一番テレビの近くにいる須田に話しかけた
「え、待って待って!明日の天気っ!!明日、雨なら持久走無しになるんだからっ!!」
「ええっ!!?ちょっ、須田君っ!!?」
須田は、ゲームをポーズ画面にしてから、焦って淳を止めて、テレビを死守してから、スウと大きく息を吸った
「理沙さぁぁぁんっ!!天気予報始まったーっっ!!」
須田が大声で理沙を呼ぶと、ドタドタと大きな音を立てて、理沙が上の階から下りてきた
「雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨」
呪いの言葉を呟くように、ゆらりとテレビの前へ歩くと、理沙は行儀良く正座をして、食い入るようにテレビを見つめた
須田に捨てられた石田は、一人で落ち込みながら、違うゲームをプレイし始めた
『それでは、明日の天気ですっ!!』
元気の良いアナウンサーの明るい声をテレビ越しに聞きながら、須田と理沙はゴクリと唾を飲み込む
テレビの画面にパッと表示される日本地図
羽生蛇村のある埼玉県には
真っ赤な太陽のマークが表示された
「「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」」
「うるさいっ!黙れっ!!」
2つの断末魔の叫びが、寮内に響き渡った
流星群
6日前 19:30
「チクショー…天気予報め………見事に当てやがってぇぇ…」
夕飯の時間、須田は恨めしそうに呟きながら、魚をグチャグチャと引っ掻き回していた
「おい、汚いから止めろ」
淳は須田の手の甲をペチンと叩いて、骨を取り除いていった
「わぁ、淳お母さんみたいにウルサーい」
「よし、須田、表に出ろ」
「そういえば、そろそろ双子座流星群がくるんだってね」
一触即発の二人を無視して、美奈は思い出したように言った
「ああ、そういえば昨日天気予報で言ってましたね」
「え、え、何それっ!!」
牧野も思い出したように言うと、淳と睨み合っていた須田が食い付いてきた
流星群、所謂、流れ星というのは、高校生にとってみれば、魅力的な言葉だった
ましてや、須田のような行動的な人間にとってみれば、なおさらのこと
キラキラとした瞳で聞かれた牧野はというと、詳しくは知らなかったのか、困ったように視線をさまよわせた
「ええーっと……何でしょう?」
「………流星群では、肉眼でいくつもの流れ星を見ることができるんです
双子座流星群はその中でも、流星が流れてくるように見える、放射点と呼ばれる中心点が、双子座のそばにあり、三大流星群の一つとなっています。
今年は、新月も近いので、この村のように田舎の地域でしたら、空が黒くなりますから、一時間に20個〜30個くらいの流れ星が見れるんじゃないですかね」
救助を求める目で、牧野が宮田の方を見ると、見られた宮田は呆れたように溜め息をついてから、須田に説明をした
「へー」
分かっているのかいないのか、須田が頷いて少し考えこんだ
「…………きょうや?」
黙り込む須田を不思議がって、美耶子が声をかけると、ばっと顔を上げて須田は言った
「よしっ!!みんなで見ようっ!!」
3日前 18:00
コンコン
八尾の校長室に静かなノックの音が響き渡った
「はーい、どうぞ?」
柔らかい声で、八尾が答えると、ドアが開き、宮田が入ってきた
「………どうも」
ぺこりと、宮田は挨拶にならない挨拶をした
八尾は目を丸くしながら、宮田の方を見て、言った
「珍しいわね、アナタが私に会いにくるなんて」
宮田は、笑顔でサラリと人のことを騙す八尾が嫌いでしょうがなかった
それに加えて、牧野が懐いているとあって、殊更嫌いで、出来れば会話をしたくない、というのが宮田の本音だった
隠すことなく舌打ちをしたあと、ガシガシと頭をかいてから、八尾に向かって言った
「3日後の双子座流星群の日に、学校の屋上を深夜解放して頂けないでしょうか」
不服そうにブスッとした表情で、宮田が言うと、あらあら、と言いながら八尾が笑顔で宮田の頭を撫でた
すぐに、宮田はバシッと手を払い、死ね、と小さく呟いた
「良いですよ、では、屋上の鍵は渡しておきますね」
気にした様子もなく、机から鍵を取り出して、宮田に手渡した
「ありがとうございます」
宮田は早口で礼を言って足早に出て行った
「楽しんで下さいね」
バタリと、ドアが閉まった
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