口直し?




石田さんや、淳様や、須田君は、


一方的すぎる、とか

牧宮っていうより、牧→→→宮じゃね?とか

牧野さんは見てて(頭が)可哀想だとか



そんな風に言うけれど



やっぱり私たちは仲が良いのだ


良いのだと思う



良いのだと思いたい



       牧野慶






「どうですか、コレ?」


夕方、
牧野はベッドに座りながら、ブラブラと足を動かして、牧野は原稿用紙の文字を読み上げた

そして、クルリとドアの方を見て、意気揚々とそのベッドの持ち主に話しかけた



「失礼ですが…………うるさいですよ牧野さん。早く自分の巣に帰れ」



持ち主、宮田の方はというと、牧野の方を見ながら、顔色一つ変えずに言い放った


「………すいません」


宮田を見た牧野は、先ほどまでと一変して、顔色を真っ青に変えると、凍りついた表情で、小さくなった



「いつからここにいるんですかアナタは。」



はあ、と溜め息をついて宮田は窓の外を見た
冷気を送ってくる窓から逃れる為、シャッと、カーテンを閉める

白衣を脱ぐこともせずに、疲れたように椅子に座った



「えーと………1……時間………くらい…前から…ですね」



チラチラと、宮田の顔色を伺う牧野に、宮田は冷たい視線を浴びせる



「本当は?」

「ぅ…………二時間…ですかね…」



牧野が俯き加減に言う


「とりあえず………」

宮田はそういうと椅子から立ち上がって、牧野のもつ原稿用紙を乱暴に取り上げた


誉めてと言わんばかりの牧野を無視して、その原稿用紙を一瞥すると


「あああああっ!!」


一瞬でビリビリに破り捨てた


orzの形で倒れ込む村の求道士


おそらく村の人間がこんな光景を見たら、また、宮田の悪い噂が増えるのだろう



「これはキチンとゴミとして出しておきますよ、感謝して下さい」

「わあ、ありがとうございます、助かります…………あれ?なんかおかしくないですか?」

「気のせいじゃないですか?」


宮田は生返事をしてキッチンへ行く

ココアを作り、二つのマグカップに均等に注いだ



「どうぞ牧野さん」

部屋で未だに落ち込む牧野に、ココアを手渡す



「え、これイジメですか?」

「甘い物嫌いでしょう?キチンと飲み干して下さいね」

「うぅー………」



美味しそうにココアを飲む宮田を見ながら、牧野はむせかえるほど甘い匂いに半分涙目になった

宮田はいい気味だ、という顔で牧野を見下ろす
なんていったって、仕事で疲れて帰ってきて早々に、見たくない顔を見たのだ

この程度の嫌がらせ、可愛いものだろう



椅子に座ると、飲みかけのココアをコトリ、と机に置いて、小さく欠伸をした



「宮田さんんんん………」



困り顔の牧野は、許しを請うように宮田の名前を呼ぶが、返事など無い

数分間、あーとか、うーと唸っていたが、やがて意を決したように、唾を飲み込むと、
一気にマグカップを傾けた



「ゲホゲホっ!」



喉が焼けるような甘さに、思わず牧野は咳き込んだ



「飲んだんですか」



意外だ、というように宮田は目を丸くした



「ゲホっ、いただいた物ですから……」

「アナタは変な所で律儀ですね」

「変な所って………」



ズーンと落ち込みながら、牧野は言う

しかし、すぐにその雰囲気を一転させた



「そうですっ!!口直しが欲しいですっ!!」



宮田は牧野の表情を見ると、嫌そうに顔を歪めた

牧野がこの表情をする時には大抵人に迷惑をかける



「………一応聞きますけど、何が欲しいんで……っ」



宮田が牧野に問うより先に、牧野が行動を起こした


いつの間にか、目の前にある牧野の顔を見て数秒、宮田はやっと口付けられたのだと理解した



「っ……はっ…」



牧野は逃げる舌を追いかけて、絡ませて、熱い口内を堪能しながら、後頭部に手を添えて、宮田の表情を堪能する


「ふ………っ、〜っっ!」


痺れるような甘い感覚を感じながら、白衣を半分脱がされたところで、
息が保たなくなっていた宮田は、身の危険を感じて、思いっきり牧野の頭を殴った


「いたいっ!!すごくいたいっ!!」


激痛を感じた牧野はパッと唇を離して、宮田を見た

睨みつけるつもりだったのだが、それは実行に移されなかった



「はっ……はぁっ………」



絶妙な具合にはだけた白衣と真っ赤になり涙目で見上げてくる、宮田の色っぽさに、一瞬魅入ってしまったからだ



「白衣って……良いですね…」



変態的なことを呟きながら、牧野は宮田のベルトをカチャカチャと外す



「……止めて下さい、止めなさい、止めろ」

「………そんな全力で嫌がらなくても…」


力弱く抵抗をしながら、だんだんと素に戻っていく宮田の声を聞いて
苦笑する



下着ごとズボンを下ろすと、牧野は跪いて、宮田自身に触れて、口に含んだ


「まきのさっ……ひっ…!」


宮田は抗議の声をあげようとするが、生暖かく、柔らかい牧野の舌がそれを許さない


「ふ…………んぁ……」


宮田の竿を舐めあげると、甘い声が宮田から出た

ビリビリと襲ってくる快感に飲まれまいと、抵抗するべく、牧野の黒い髪を宮田は鷲掴みにした


「みっ、みやふぁひゃん、いらいでふっ!!」

「っ!………そこでっ、しゃべ、らないで下さいっっ!!」


くわえながら牧野が悲鳴をあげると、喉の震える感触が直接自身に伝わり、宮田は牧野を睨みつけた


「ん……ゃ……ぅあっ、」


裏筋を丁寧に舐めれば、びくりと宮田が震えた


「はっ、ぁ……牧野さっ…」


熱い息と共に吐き出される声が、限界を訴え始めた


「ふぁ……ぅあ、んぁあぁぁっ!!」

逃げるだろうと予想される腰を押さえつけて、
鈴口に舌をねじ込むと、一際甘い声をあげて宮田が果てた


牧野は唾液で宮田が出したものを薄めて、ゴクリと、飲み込んだ




「はっ……は…ぁ………………」

「………だっ、大丈夫ですか宮田さん?」


手のひらで顔を隠しながら、肩で息をする宮田を、牧野は心配そうに覗き込んだ


「殺す…………」


手のひらの下から思いっきり睨みながら、宮田は地を這うような低い声で呟いた



まさに、蛇に睨まれたカエル

牧野は、冷や汗をダラダラと流しながら、硬直した



「宮田さん……シャレになりません」

「……そりゃ、洒落じゃありませんからね」



服を整えながら、宮田が言う

牧野は、突き刺さる冷たい視線から逃れるべく、口付けようとしたが、それはかなわなかった



「歯磨きくらいして下さい」

「………はぃ…」


肩を落としながら歩く、へたれ求道士を見ながら、医者は小さく溜め息を吐いて、ポツリと零した




「………明日から出入り禁止にしよう」




 口直し?
  



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