side:須田




………お腹がへった


「おい、どれにするんだ須田」



始業式の後、
牧野さんの帰りなさい、という、注意をスルーしてオレ達は6時くらいまで、教室で話をしていた


本当に牧野さんが担任で良かった
みーななら、きっと、頭を一発殴られてた……



その帰り道、オレは、淳と一緒に果物屋に行った

美奈ちゃんのお見舞いのフルーツを買うためだ


鼻をくすぐるフルーツの甘い香りは、オレの空腹を余計煽る

いつもなら、この時間帯は村の駄菓子屋やらコンビニやらに行って、何かしら食べてるからだろうか、


無駄に空腹で満ちている



「うーん、どうしようかなー……」



まずい、お腹がへって、思考することを脳が放棄している

だんだん自分の食べたい物を選びたくなった




グ〜




「…………………」
「…………………えへ」




とうとう腹の虫が悲鳴をあげた


ああ…淳の視線が氷点下になっている………



ハア、と見かねた淳が『あまおう』と書かれた、パックを取る



「イチゴで良いだろ。確かお前も、美奈も好きだったよな?」



そう言うと、淳は財布からお金を出して、果物屋のおじさんに払った


まけてやるよ、というおじさんの優しい言葉に甘えて、2パック買えたイチゴを手にぶら下げて帰る


「宮田先生、もう寮に来てるかなあ」

「さあな」

「美奈ちゃん、イチゴ喜んでくれるかなあ…」

「さあな」



真っ暗になった道をブラブラと淳と歩く


「………………宮田のやつ、牧野にそっくりだったな」



さっきまで、生返事しかしなかった淳が、ポツリと呟く



「確かにねー。双子かと思ったんだけどなあ………」



もし、双子だったら、美奈ちゃんと理沙さんとお揃いっていうことになったのになあ………



「残念………」

「………そうだな」



やっとこさ寮につく
淳が腕時計を見ると、6時30分

ちょうど夕飯の時間帯だった



「淳ー、今日の夕飯なにー?」

「……秘密だ」



淳がニヤリと笑って、寮の中に入っていった




……なんか、ムカつく…




         Act4.





「たっだいまーっ!!」


ドンっ、とドアを開けて、家に入る


「おかえりー」



理沙さんの声がした

洗濯物を取り込んでいたみたいで、綺麗に畳まれた洗濯物を抱えていた



「美奈ちゃんまだ寝てる?」

「?今は起きてたよ」



よし、ならとりあえず、美奈ちゃんにイチゴをあげてこよう

キッチンへ行って、
パックの中から、4つ、美味しそうなイチゴを選んで、皿にのせる


「美奈ちゃーん?入るよー?」


ノックのあと、10秒くらいしてから、ドアを開ける


「どうしたの?須田君」


ニコニコと柔らかい笑顔で美奈ちゃんが迎えた

おでこに冷えピタを張って、青い顔で笑いかけられると、こっちまで辛くなってくる


「うぅー………美奈ちゃんんん……大丈夫ー…?」


自分でも分かるくらい泣きそうだ
美奈ちゃんはその顔を見て、手のひらを口元に当ててクスクスと笑った


「大丈夫よー、それで、どうしたの?」

「あっ、そうそう、美奈ちゃん、これっ!」


手に持っていたイチゴをに見せると
美奈ちゃんは嬉しそうに笑った


「ありがとう須田君っ」


…なんていうか、理沙さんと美奈ちゃんって、
動と静だよなあ………

可愛い系と綺麗系って感じだ



「須田君ー?お姉ちゃんのとこからそろそろ出なよー、風邪、移っちゃうよ?」

「あ、分かったー!じゃあ、お大事に」

「うん、イチゴありがと」



部屋から出て、自分の部屋へ向かおうとしたとき



ガチャリ



と、家のドアが開いた

ダッシュで玄関へ向かう


「おかえり牧野さんっっ!」

「わっ、須田君、ちょっ、おっ、重いっっ!」



牧野さんに抱きつくと、支えきれずに牧野さんが後ろに倒れた

ガンっと鈍い音がしたあと、牧野さんは頭を抱えて涙目になり、声にならない悲鳴をあげた


すると、牧野さんの後ろになって見えなかった影が見えた



「宮田先生だっ!!」

「!!?」



宮田先生にも飛びつくと、先生は警戒する猫みたいに、体をびくりと震わせた


「へへー、先生おかえりー」

「すっ、須田君……踏んでる…」



牧野さんが顔を真っ青にさせながら、オレの足を軽く叩いた


「うわっ、ごめん牧野さんっ!!」

「だ…大丈夫です………」


ゼエゼエと息を切らしながら、牧野さんは立ち上がった



宮田先生は、そんな牧野さんを見ながら、オレをベリッと引き剥がした


綺麗な顔が、無感情に見つめる

せっかく、イケメン顔なんだから笑えばいいのに



「あっ、宮田さんだ」



宮田さんの顔を笑わせようと手を伸ばす前に、タオルを肩にかけた石田さんの声に振り向いた


「石田さんもう風呂入ったの!!?」

「いやぁ、亜矢子さんに二日酔いが抜けないって言ったら、風呂につっこまれたんだ」

「ああー」




亜矢子さんなら、やりそうだなぁ………


「そういや、宮田さん、結局誰と住むことになったの?」


石田さんが、聞くと、宮田さんが少し不機嫌そうな顔をした……気がする



「…………………」

「…その、私…です」



言おうとしない宮田さんの変わりに言ったのは、息を整えた牧野さんだった

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