アナタに食べられた



side:宮田


「何が食べたいですか」


調理台に立ちながら、私は自分の家を物珍しそうに眺める牧野さんに尋ねた

必要最低限の物しか置かれていない簡素な部屋に、同じ顔が2つというのは、客観的に見れば非常に滑稽なものだろう


私は包丁とエプロン代わりの白衣、そして、料理に髪が入らないように後ろを束ねる。
そして、牧野さんが持ってきた袋の中身を確認した



……ずいぶん買ったものだ
これだけあれば何でも作れる


「えっ、わ、私が決めて良いんですかっ?」


牧野さんが驚いて聞き返してきた

「ええ、まあ、食材はアナタが買って下さったワケですし」

おれの言葉を聞いて、牧野さんが嬉しそうに笑う


「えっと、じゃあ……クリームシチューが良いです」
「分かりました」


早速準備にかかる
牛乳、生クリーム、人参、ジャガイモ、玉ねぎ、鶏肉など、クリームシチューに必要なものを袋から取り出していく

それを見て牧野さんが目を丸くした


「宮田さん、シチューのルゥから作れるんですかっ!!?」
「ルゥから作らずにどうするんですか」
「うぅ……」


さすがは料理知らずというべきか、牧野さんにとってはシチューだってカレーの様にルゥを入れれば出来るもののようだ


「何か手伝うことはありますか?」


下準備を重ねる私の手を牧野さんが覗き込む

「そうですね……ジャガイモの皮を剥いて下さい」


牧野さんに包丁を渡そうとしたが、彼に包丁は危険だと思いとどまり、ピーラーに手をのばす

「それ……どうやって使うんですか?」

手を伸ばした先を見て、牧野さんが首を傾げる




呆れた
思わず溜め息を吐く




「じゃあ、食器を洗って下さいますか?」
「すいません………」


求導師の威厳もへったくれない牧野さんは、求導服を脱いで、シャツを腕まくりした


彼はいつも求導服を着込んでいるから、シャツだけというのは珍しい


腕まくりなんて、このヘタレには似合わないと思ったが、存外に似合っていて、驚いた



side:牧野


ジー

ジャー

ジー

ジャー


……なんだろうさっきから見られている気がする


もしかして、あの皮を剥く機械もどきが使えないのはそんなに異様なことだったのだろうか



どうしようきっと宮田さんは呆れている私は視線から逃れるように、皿を一心に洗うフリをする


実際は視線が気になってしょうがない


それにしても、宮田さんは料理をしていても様になる
というより、この人は料理も得意だったのか……

カチャカチャと皿を洗いながら、チラリと宮田さんを見ると、目が合った

なのに直ぐに目をそらされた




そ、そんなに、なんですか宮田さん………




今までの人生で料理なんてしたことが無いから、あの機械が使えないことが、良いのか悪いのか、よく分からない………


「み、宮田さんどうしたんですか?」


とりあえず、宮田さんに聞いてみることにした


「………何がですか」


宮田さんは本気で分からないみたいで、先ほどの機械もどきを見た私みたいに、首を傾げる

良かった別に呆れられてるワケでは無いみたいだ


なら、なぜ彼は目を合わせてくれないのだろうか


やはり、強引に仕事を中断させたからだろうか


というより、こちらを見てくるのに、目が合うとそらすのは何故だろうか


「宮田さん、どうかしましたか?」
「何でですか」


怪訝そうに彼が眉を寄せる

「いえ、こちらをよく見ているので………もしかして、何かいけなかったのかと」

私がそう言うと、宮田さんは数秒してから顔を真っ赤にさせた



ますます宮田さんが分からない



「宮田さん?」
「……………気にしないで、牧野さんは皿を並べて下さい」


俯き加減に自分の手元を見ながら、宮田さんが言う

しかし、人間不思議な生き物で
気にするなと言われれば言われるほど、気になるものである


「宮田さん、私、何か悪かったんでしょうか、すいません……」
「違いますから、早く並べて下さい」


もう、何が何だか分からない


「…宮田さん」


名前を呼んで理由を催促してみるけど、変わらない


だんだんイライラしてきた
ついでに言うとお腹がへった

もしかしたら、お腹がへったからイライラしているのかもしれない



ともかく、理由を意地でも聞きたくなってしまった



彼の腕を引っ張る
突然のことにバランスを崩したところを、すかさず押し倒す


私だって、伊達に宮田さんと長く付き合っているワケではないんですっ!!
後が怖いけど、それさえ考えなければ、彼を押し倒すことだって出来る



「……牧野さん、どいて下さい」

未だに状況を全て把握していない宮田さんは、憮然とした表情で私に言う


そんなこともお構いなしに私は宮田さんの耳を甘噛みした



side:宮田



「……宮田さん」

催促するように名前を呼ばれるが、関係ない

こんな理由、情けなくて彼に言えるワケがない


すると雰囲気の変わった牧野さんに腕を引っ張られバランスが崩れる

気がつくと、天井と牧野さんの顔があった


「……牧野さん、どいて下さい」


恥ずかしさと鬱陶しさとで、彼に対する言葉に刺が入る


しかし、知ったこっちゃないという顔で牧野さんがこちらを見る
すると、


「ヒッ!」


突然耳を噛まれた
といっても甘噛みだが、突然の刺激に情けない声が上がる




冗談じゃない
彼はここで事に及ぶつもりのようだ




もがいてみるけど後の祭り、元々双子であるから、力はほとんど同じだ
牧野さんと自分の状況を見れば、有利か不利かくらい分かる

けど、このままここでヤるのは嫌だ



「まき…っ!」



いきなり下着に手をつっこまれる

彼の行動はいまいち予想がしづらいから、こういう時ツラい


「……宮田さん、気になります、教えて下さい」


彼の目的がやっと分かる
つまり、ここでヤられたく無ければ、見ていた理由を話せという事だろう


牧野さんのクセに脅しを使われるのがムカつく



「……嫌です」



せめてもの抵抗に少し睨んで、彼の言葉を拒否した


side:牧野



「……嫌です」


本当になんなんだろうか、宮田さんは


さすがにここまでやれば、宮田さんも怒りながら教えてくれると思ったけど、違ったらしい


下着の中の彼に触れる


「牧野さんっ!!」


彼の言葉を無視して、服を脱がす

病院に籠もりきりだったせいだろうか、いつも以上に肌が真っ白だった


「もっ……はなしてくださっ………」


彼のを扱いながら考えていると、宮田さんがイきそうなのか、私のシャツを掴んでくる


いつもなら、そのままイかせるんですが……
今日は彼の望み通りに手を離す



「っ…はっ…」



未だ、荒い息を吐く宮田さんを無視して、後ろに指を入れる


「やっ、め」


彼が私の体を押し返そうとするが、すでに抵抗の力が残っていないのか、それは逆に縋るような姿になっていた「ふっ………っ」



そんなに言いたくない事とは何なんだろう



中を解しながら、彼のことを考える


いつもは、私が何かを望めば、宮田さんは文句を言いつつもやってくれる
なのに、ここまで拒むのは何でか分からない


宮田さんのことは、けっこう理解し始めたつもりだったのですが…………


そんなことを考えながら、すでに三本入るようになった宮田さんの中の良いところを軽くひっかくと、オーバーなくらいに体が大きくはねた


「……っ…うぁっ…………い……ァっ!!」
「……宮田さん」


彼の名前を呟きながら、ズボンだけ脱ぐ
すると、名前に反応して宮田さんがこっちを見てくる
なのに、またすぐに視線を逸らした


何が何だか分からないまま嫌われて、私は苛立ちと一緒に、寂しさも感じた




「ぁっ、まき、さっ!!……ゃっ…ふっ………んっ…っっ!!」


抗議の言葉を口で塞いで、彼の中に突き立てる


「ふぁっ、ぁあぁっ!!まきっ、さんっ!」


目に涙を溜めながら、今にも消えてしまいそうな理性を、保とうと切なそうに顔を歪める姿は、そそるものがあった


ふと、彼のうなじが目に留まる
料理に髪が入らないようにするためだろうか、髪を後ろで束ねたせいで、真っ白なうなじがさらけ出されていた

なんとなく、美味しそうな気がして、噛みつく


「ふぁっ!!?…ばかっっ、ぅ、ぁっ!!」


彼がさらに締め付けてくる


「もっ、イくっ…」
「!ダメですっ」
「っ!!?う、ぁっ、ゃっっ」


彼がイきそうになる前に、彼自身の根元を握る


解放されなかった熱が体の中を巡るのか、辛そうだった

私も正直少しツラい



けど、まだ、ダメなんです



「はっ…まだっ、宮田さんの理由を聞いてません」

動きを止めて、彼の顔を真剣に見る

すると、彼の顔が真っ赤になり、後ろが更に締まった


「ぁっ………もっ、や、だぁぁっ!!」


本気で辛いみたいで、ボロボロと生理的な涙が彼の頬をつたう
それを安心させるように、なるべく優しく舐めると、
それにすら反応するみたいで、ビクリと体が震えた


「……宮田さん…」もう一度、彼の名前を呼んで促す


「…まきの、さん、が」


涙を流しながら、途切れ途切れに彼が言葉を紡ぐ

「いつもと違うからっ、ふゃ、ぅぁあぁっ!!」


言うと、本気で限界なようで、いつものプライドも理性も捨てて、私に抱きついてくる



いつもと違う?何が?



自分の姿を見る



……ああ、そういうことですか


彼が言うのを嫌がった理由がやっと分かった



動きを再開させる


「ふ、ぁあっ!!……ぃっ、やっ!……ァ、ぅぁあっ、ィくっ!!」


今度こそ動きを止めずに、彼に口づける


「私もですっ……っ、宮田さんっ!!」
「ふぁっ、ぁっ、ぅぁぁああぁっ!!」



彼と共に私も達する
疲れたようで、宮田さんが意識を手放した




冷静になって考える



私は明日生きているのでしょうか、と



side:宮田




「んぅ……」


目を覚ますと、ベッドの上だった時刻を見ると、そろそろ日付をまたぐ時間だった


疲れた頭で何があったか、思い出して、恥ずかしくなる




本当に嫌だ
信じたくない





………いつもの求道服と違う、シャツ姿の牧野さんが意外に、格好良い、なんて、思って、それで、
知らず知らず見つめていただなんて




「み、みみみ宮田さんっ!!?おっ、起きましたかっ!!」


自己嫌悪していると、
牧野さんがドアの後ろに隠れながら、こちらに向かって叫ぶ

泣きそうになりながら、こちらを見てくる姿は情けないの一言につきる



泣きたいのはこっちだ



「………牧野さん」


声を出すと、予想以上に枯れていて驚いた

「すっ、すいません………これ、水です……………」


ペコペコと謝りながら、牧野さんが水を出す

受け取って、水を飲み干す
冷たさが喉を流れて気持ちいい




暫しの無言が続く




牧野さんが心配そうにこちらを見る


おそらく、私が怒ると思ってるのだろう


今回は私にも非があったから、怒るつもりはあまり無かったが、
彼の顔を見てるとイライラしてきた期待通り怒ってやろうと思った





シチューを作るにはまだ時間がかかりそうです



他でもない
  



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -