甘い、甘い





砂糖菓子はどうしてこうも甘いんでしょうか




今日は10月31日
世間一般ではこの日をハロウィンと名付けて、お菓子をもらったり、イタズラをしたりする日である。


多くの大人がお菓子を準備して、子供は袋をもって、行事に参加する。


かくいう牧野もその一人で、教会を訪れる子供に、笑顔でお菓子をあげていた


しかし、この小さな村で子供の数なんて限られているワケで
すでに、お菓子は全ての子供に渡し終わっていた

そして、牧野は現在、あまったお菓子を一人で食べていた

しかし、いかんせんキャラに似合わず、甘い物が苦手な牧野は、一つのお菓子を処理するのに、一般人の数倍の時間を使っていた。

「うぅー………もう限界かもしれない……」

喉が焼けるような、チョコレートの甘さに苦しみながら、牧野は白旗をあげた

「お菓子どうしましょう……」

情けなく眉を下げながら、小さな飴を指で弄ぶ

しかし、そんなことをしても、飴が消えてなくなるなんて事はありえない。

恨めしげに飴をゆっくりと、机の上にあるお菓子の山の上に置いた。

どうにかして無くならないものかとジッとお菓子の山を見る。


「失礼します」

何分たったのだろうか、牧野が山を睨みつけていると、教会に一つの声が響いた

「あ、宮田さん」

振り返れば、宮田がドアの前に立っていた

何をしにきたのかイマイチ分からなかったが、とりあえず彼に近づく


「どうしましたか?」


牧野が笑顔で聞くと、宮田は何事かを言いたそうに、口を開閉させた

「その、」

悟れ、という目でこちらを睨みつけてくるが、分からないものは分からない。


「宮田さん?」
「……と…………」


促すように、彼の名前を呼ぶと、宮田は、牧野から視線をついと外して、顔を赤くしながら、小さく呟いた

しかし、牧野には聞き取ることは出来ないくらい、小さい声だった。

「すいません。もう一度言っていただけますか?」

恨めしげにこちらを見てくる


正直怖い


意を決したのか、俯きながら息を大きく吸い込んだ

「牧野さんっ!!」
「は、はいっ!!」




「………Trick or treat」




「………はい?」




言われた言葉のあまりの不似合いさに、驚き、聞き返してしまった




すると、泣きそうになりながらこちらを見て

「………もう良いです」

帰ろうとしてしまった



「ま、待って下さい、待って下さいっ!!」


彼の白衣の袖をつかんで引き止める


宮田が不利な状況なんてめったに無い上に、甘い物を処理できる。
しかも、宮田は兄弟であり恋人なワケで。


牧野は一緒に居たいワケである


と言っても、彼の機嫌はすでに斜めを通り越して、ひん曲がっている


牧野は考えた


どうすれば彼と一緒にいられるか


「み、宮田さん、実は私、甘い物苦手なんです。
なのに今日お菓子があまってるんです。
食べてくれませんか?」

決死の思いで出した言葉


緊張が走る



「………良いですよ」



内心のガッツポーズさっそく宮田を奥へ入れる


「……そういえば宮田さん、甘い物好きなんですか?」


宮田が食べているのを眺めながら、牧野が聞いた


「…ええ、まあ」
「どうして嫌そうなんですか?」


宮田があまりにも、嫌そうに答えるので思わず牧野は聞いた


「私みたいな人間が甘味好きって、変じゃないですか」


口を尖らせなが、宮田が答える。

お菓子を食べながら、口を尖らせている彼は、いつもと違い、子供っぽさがあり、牧野はクスリと笑ってしまった


「別に可愛いじゃないですか。私は好きですよ、宮田さんのそういう所。」


牧野がそういうと、宮田の顔はみるみる赤くなっていった


宮田は赤くなった顔を見られないようにするべく、牧野の口にキャンデーを突っ込んだ


「うるさいですよ」
「うっ…うぇっ……ゲホッ………」


あまりの甘さに咽せる牧野を見ながら、宮田が話す


「意外でした」
「何がですか?」


涙目になりながら、牧野が聞く。


「アナタは甘い物好きだと思っていました」
「ああ」


牧野にとっては、よく言われることだった
が、嫌いなものは嫌いである
例え、牧野のキャラに合わなくても、甘味を好きになることは出来ない



ゆっくりと時は流れていく



てんこもりだったお菓子の山は、たった一つの飴だけになっていた



最後の一つを宮田は頬張った

その姿が、飴を美味しく見せていた


「宮田さん」
「なんですか」
「私も飴、舐めてみたいです」


頼んでみても、最後の一つだ
どう頑張ったって、牧野にあげることは出来ない


さて、どうするかと宮田が考えあぐねていると
牧野が顔を近づけてきた


「これで良いですよ」


そういうと牧野は宮田と唇を重ねた


「!!?ふっ………んっ…はっ…………はぁっ…」


宮田の口から飴の甘さを奪いとり、唇を離すと
目の前には本日一番真っ赤な顔


牧野はその顔を見ながら考えた




―これなら甘い物も悪くない








     甘い、甘い




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