君が生まれた日
愛しい人の誕生日。
一体何を作れば喜んでもらえるかな?
「ありきたりかな…んん、でも、トールなら受け取ってくれるはず!」
手を止め、掲げるように「それ」を持つ。
うん、なかなかの出来映えなんじゃない?
今年あげようかなぁって思ったのは、手作りのセーター。トールが仕事に行ってる時とか、寝たあとにこっそり作ってた。ちょっとずつしか進まないから、だいぶ長い間作ったと思う。
喜んでくれるかな…
色は紫にしちゃった。俺色に染めたいんだもん、…なーんてね。
「んー…ちょっと休憩」
伸びをして、キッチンへ向かう。
お湯を沸かしてぼんやり外を眺める。
雪がしんしんと降り積もっていく。帰ってきたらあったかいお風呂にいれてあげなきゃね。
沸いたお湯をポットに入れ、紅茶を入れる。
よし、もうひと頑張り、と部屋に戻ると…
「ん?」
「あぅー」
「あ」
ルークが毛糸に巻かれていた。
「あちゃー、毛糸玉いじっちゃったの?」
「ぱぁぱ…」
うるうるとこちらを見つめられ、きゅんとなりながら近づく。全くもう、最近すぐ色々なものに興味もって突撃しちゃうんだから。
「ごめんね、届かないところに置けばよかったね」
「ぁう…とえない…」
「絡まってるもんね」
「かりゃ…ま?」
「ふふ、じっとしててね」
実際きつく絡まってしまうと危ない。
今度はルークと一緒に移動しないとダメかも。
「これはね、トールぱぱにあげるんだよ」
「とーりゅぱぱ」
「そうそう」
ルークも随分言葉を覚えてきた。
可愛くて可愛くてたまらない。俺もトールも目一杯可愛がってる気がする。だって可愛いんだもん!
「喜んでくれるかな?」
「うー?」
「ルークも一緒にお祝いしようね」
「おいわい!」
「そう、お誕生日のお祝い」
「おたんじょび」
「おめでとうって言うんだよ」
「おめれとー!」
「ふふ、可愛い…」
「かぁいい?」
今年も愛しい人の誕生日を祝えることが嬉しくてたまらない。ルークを抱きしめ、幸せに浸る。
こんな幸せをくれたトールに、たくさんたくさんありがとうを言いたい。
トール、生まれてきてくれてありがとう。
終
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