「そうかそうか。ま、仕方ないな」

謁見の間だと色々と面倒なので、ピオニーの私室で事情を説明する。事のいきさつを聞き終えると、はっはっはとピオニーは笑い、ジェイドは眉間のしわを深くさせた。

何が仕方ないで済むのか目の前の賢帝様は説明してくれるのだろうか。

「そうそう、仕方ないよ」

「あなたは黙っていなさい」

ジェイドがカイナの頭をぺしりと叩くと、するりと腕をすり抜けてガイの足元にしがみついた。ガイは「よしよし」とか言いながらカイナを抱き上げる。

「はは、しかしこの姿を見るのは二度目だな」

「欲しいなら差し上げますよ」

カイナを肩に乗せ笑っているガイにジェイドがそう言うと、ピオニーは鼻で笑った。

「冗談言うなよ。手放す気はないくせに」

「……陛下」

ジェイドはじろりとピオニーを睨むが、睨まれているほうはどこ吹く風といった様子だ。

「ははっ、ジェイドは親バカだからな」

「だが昔はどこから見てもロリコンだったんだぞ?」

ロリコン。その四文字を聞いた瞬間、ジェイドの眉が跳ね上がる。心なしか口の端がぴくぴくと痙攣しているのは気のせいだろうか。

「そうですかそこまで言うなら叶えて差し上げましょう。天光満つる処……」

「しっつれーしまーす」

ジェイドの詠唱を見事に遮る形で、気の抜けた声が部屋に響く。

「失礼します。陛下、こちらに将軍は――と、大佐とガイも居たのですか」

「あ、ちょうどいいところに。大佐、うちの大将知りませんか?」

入ってきたのはハイウェルとクローム、カイナの部下二人組だ。しかし彼らはよくもまあ物おじせずに皇帝の私室に入れるものだ。

「知っているといえば知っています。知らないといえば知りません」

「…ガイは知らないのか」

「え?いやあ、ははは……」

乾いた笑いをもらすガイ。その肩の上に堂々と座っている白い動物を見て、ハイウェルは首をかしげる。

「あれ、その動物……」

「研究用の動物です」

「にゃん」

にゃんじゃないだろう。

思わずらしくない突っ込みをしてしまったところで、ジェイドはため息をつく。

そんな白い物体をまじまじと見つめていたクロームは、首を傾げると口を開いた。

「……将軍?」

ああ、やっぱりごまかせない。


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