「こちらです」

軍本部から歩いて裏道を入り少しのところにそれはあった。おしゃれなフォントで店の名前が綴られた看板が遠慮気味に飾られていてメニューの一部が店前の角にそっと置かれている。外から中の様子は見えないようだ。

「ではどうぞ、お嬢様」

執事の真似事をしてドアを支え店内へ誘導する。それに微笑をもらしながら従い中へ入ると外装とは違った雰囲気の内装にほうっと見とれる。

「いらっしゃいませ。カーティス様ですね、お待ちしておりました」

ジェイドを見た店員がお辞儀をし、奥へどうぞと案内する。予約をとっていたのは人目のつかない落ち着いた雰囲気の場所で、そこからグランコクマの水と街とかシンクロした綺麗な街並みが家々の灯りにライトアップされ今までみたことのないほどの夜景を見渡せることができた。

「わぁっ…!素敵…」

素直に感想を述べると喜んでいただけてよかったですとジェイドが言う。

「こんな素敵な夜景が見れる場所があったのね、知らなかったわ」

「知る人ぞ知る店ですからね。気に入ってくださると思いました」

嬉しそうにするnameをみてジェイドもまた嬉しそうに微笑む。いつものような営業スマイルではなく、心を許したものにのみ見せる本当に優しく柔らかい笑顔を。

「今日はnameにプレゼントもありまして」

「あら、珍しい。ディナーといい、プレゼントといい、どうしたの?今日私誕生日でも記念日でもないわよ?」

普段からは考えられないような嬉しいことの連続にどうしたものかと首を傾げるとジェイドは驚いたようにする。

「今日が何の日かご存知でないのですか?」

「…ボーナスが久々に入ったとか?」

本当にわからなくて頭をひねらせて出した答えにぷっと吹き出され不正解だと知らされる。

「なんなのよー。何か特別な日?」

くすくすと笑うジェイドを焦れったく感じ正解を急かすとそれは予想にしてなかった答えで、

「3月14日、ホワイトデーですよ」

口元を抑え笑いを堪えながら言った答えはあまりにもピンとこなく、nameは更に首を傾げる。

「え、だって私、バレンタイン大したことしてあげられなかったわよ?それなのに、こんな…」

デートは愚かチョコを手作る暇すらなかく市販のチョコを渡しただけだというのに、それのお返しにしては豪華すぎないかと申し訳なくなる。

「2月はお互いに忙しかったのですから、仕方ありません。それにバレンタインの分まで一緒に過ごしたいのですよ」

言いながらポケットから小さな箱を取り出す。

「そしてこれからもずっと一緒にいれますように、私からのプレゼントです。受け取ってくれますか?」

手のひらでそっと箱を開けnameに中身が見えるようにする。そこには余計な装飾の一切ないぴかぴかのサイズの違う指輪が2つ並んであった。

「ペアリングです。貴女好みのシンプルなものを選びました。お互いの所有の証というものはあまり好きではないのですが、nameが以前欲しがっていたので」

そこまでしてくれるジェイドに感動し、涙腺が緩み始めたnameの右手を取り、甲にキスを落とす。

「よろしいですか?」

右手をつかんだままきけばこくこくと顔を赤くしながら頷く。ジェイドは指輪をケースから取り出しnameの右薬指にそっと通す。サイズはぴったりのようで、内心少し安堵する。

「ねぇジェイド、私も、」

そういってワンサイズ大きな指輪を手にとりジェイドの右薬指を掴む。手を差し出すと頬を緩め、目に感動の涙を溜めながら幸せを噛みしめるかのようにゆっくりと指輪を通していく。

「似合いますか?」

その問いにお名前は満面の笑みで頷く。目をきゅっと閉じくしゃっと笑ったため目尻からきれいな液体が筋を残し頬を伝う。そうしてお互いの右手を並べ、お揃いの指輪を眺め口を弧に描き呟く。

「ねぇ、なんだか私たち結婚するみたいね」
嬉し泣きをする貴女があまりにも綺麗で私は泣きそうになった

(貴女のその笑顔があまりにも綺麗で可愛らしく、妖艶で無垢で純粋に笑うもんだから私は、)





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ホワイトデーを題材にとお願いしたところ素敵すぎるお話しとなってやってきました!言葉が出ないです…こんなに萌えれるジェイドに合わせて下さってありがとうございました。ヒロインいいなぁ

この度は本当にありがとうございます♪末永く仲良くできたら嬉しいです^^




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