「…にゃー」

「あ、本当だ」

ハイウェルは「面白いものを見つけた」という風にに言う。

確かにあからさまに視線を逸らして「にゃー」と言えば誰だって不審に思うだろう。

「フーッ!!」

「「いや無理ですってバレバレだから」」

カイナはとりあえず威嚇してみたものの、部下二人組は声を揃えてそう言う。

「……せっかくの名演技を」

「お見事でしたね大根役者」

とぼとぼとこちらに寄ってきたカイナをジェイドは抱き上げる。

「仕方ないじゃん!ハイウェルもクロームもごまかせるわけないんだから…」

カイナはふて腐れたように呟くと、べちりと尻尾でジェイドの頬を叩く。

よし、落とそう。

「うぎゃ」

「おっと失礼、手が滑りました」

完全に不意打ちだったらしく、カイナは顔面から床に落下する。じたばたと短い足をばたつかせ床で悶えているカイナを、クロームがやれやれと抱え上げた。

「大佐。お遊びも程ほどにしてください。…将軍もですよ」

「「はーい」」

「……タチ悪い大人だな」

なんとも頼りない返事に、ガイは苦笑する。カイナも先程の痛がりようはどこへ行ったのか、今度はクロームの頭によじ登ろうとしていた。

というかよく文句言わないなあの二人。

「ま、カイナの世話はジェイドたちに任せる。これだけ身内が知っていれば、どうにかごまかせるだろ?」

「そうですね。ハイウェル、クローム、ガイ、頼みますよ」

「いえっさー」

緩い敬礼を返したのはハイウェル。クロームは無言で頭からカイナを引きはがすとジェイドに押し付けた。

あ、この子怒ってる。

その後、とりあえずジェイドの屋敷へ向かうこととなったカイナたち。

「しかし、本当にそういう姿にもなれるのですね」

「そうですね、私も最初は驚きました」

そんな会話を交わしながら宮殿前広場を通過していると、ジェイドはカイナの様子がおかしいことに気付いた。

「……カイナ?」

カイナはハイウェルのみつあみをじっと見ている。
三つ編みが揺れるのに合わせて、カイナもふらふら揺れている。

足に力が入って、そして――

「痛ッてぇ!痛いっすよ将軍!」

ハイウェルの三つ編みに飛び付いた。

「あ、ごめん!」

そう言いながらも本能に負けるらしく、物足りなさそうに三つ編みから視線を外さない。

ジェイドはカイナをつまみ上げると腕の中に納め、べしりと彼女の頭を叩いた。

どこの猫だ、お前は。


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