Fragile
::夜ちゃんへ|3000キリリク|ジェイド|甘夢


非の打ち所を探すのが極めて困難な彼に、些か可笑しな対抗ではあるが、それを探してみたくなる衝動。見れば整う容姿は極めて端麗で。君臨する地位、兵を統括する手腕を垣間見れば、彼の明晰な頭脳をわざわざ語るまでもない。

軍人としての力量だけでなく、学者としての知識も桁外れ。戦闘に出れば非凡の能力が惜しみ無く発揮される。家柄も良く、大人の魅力も品もある。歯に衣着せない物言いだって、別に私は嫌いじゃない。

そう思えるのは実に稀だと自分自身に思うものの、特にこれと言って不服に感じることはない。考えあぐむ。完璧な人間なんていないというが、世の中にはいろいろな人がいるという観点からみると、やはり一人くらい完璧な人がいてもいい気がする。

彼はその人だ。

「見てて飽きないですよ、貴女の百面相は」
不意に掛けられる声と視線。少し気恥ずかしく感じ、それを頬が忠実に再現してくれる。桃色がそこに挿した。

「ごめんジェイド。考え事してた」
「山になった書類よりも気になる考え事とは何か、是非お訊きしたいですね」

あくまで笑顔。言葉には毒。しかし彼女は難なく交い潜ってみせる。

「ああそうね、書類早く済ませないと」
「(逃げましたね)」

再び流暢なペン先の音が響く。しかし程なくそれは止む。

「ジェイド、訊いてもいい?」

特に振り向くこともなく、彼は仕事を進めながらnanashiの疑問を促した。

貴方に欠点ってあったかな

nanashiが呟けば、眉を潜ませる彼。

「何を言うかと思えば。ありますよ、当然ながら私も一人の人間ですからね」
「え、人間?」
「疑問を持つ論点が少々ずれていませんか」
「勿論よ、わざとだもの」
「…」

いうなれば"貴女だ"と言いたいのを堪え、ジェイドは息を吐いた。そのまま本題を流してもよかったはずだが、彼もまたペンを休め言葉を紡ぎ始めた。



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