馬鹿だと思った。 言い終えた彼を見上げた時、イヴはその目に無限の哀しみを見た。彼の背負う苛酷な生。その哀しみは掬い上げるには大き過ぎて、同時に自分がどれだけ卑小なのかを知った。 イヴは彼の想いを、子ども染みた見解で愚弄したその言葉が如何にちっぽけなものだったろうと後悔した。寂しいという自分の気持ちだけが先走り、アッシュの思惑も全て蔑ろにしてしまったのだ。 羞恥の色が頬を染めていく。伝う涙すら、今はおこがましいと唇を噛んで耐えたが止まらない。 「泣くな」 強くなれイヴ 「無理だよ…私はアッシュみたいにはなれない」 貴方のように強くはなれない 滲む視界が暗くなった時、自分の顔が彼の肩にそえられていることに気が付いた。イヴを片手で引き寄せた彼。手の平が頭に乗せられ、その手がイヴの頭を一度だけ撫でた。 「甘ったれんな」 痛烈に刺さる言葉は、深い。続けて話す彼に、イヴは今までに無いくらいの慟哭をみせた。悲しい涙ではなかった。 孤高な彼からの酷しくも暖かな綴りはイヴを本当の強きへと導いていく。 イヴ いつだって俺がついてる だから…泣くな イヴは声を上げて泣いた。子どものように泣きじゃくっては彼を困らせた。彼女を支える彼の掌は熱い。 くるまれた腕の中でわんわんと泣くイヴを、壊れ物のように丁重に扱う彼の胸には同じく、生きる意味が深々と刻まれていった。 stay aloof 強く気高い貴方、この涙が治まった頃にはきっと私も ←prev|next→|short top |