捜した。自分の求める無二の存在。何を犠牲にしても否わない。あまりに窮屈だ、貴方がいない世界で生きていくには。 貴方の心は私で染まる。 私の心は貴方で染まる。 その日の夕暮れは奇怪で、見上げれば空は薄い紫に覆われていた。不吉だと、感じた。しかしその考えは貴方を見つけた時からどうでもよく、記憶からは切り離されていく。駆けた私に手を差しのべて、似合いもしない笑顔を浮かべている貴方は、今何を思う? 「貴方なんでしょう?ジェシカを手に掛けたのは」 「おや、解りましたか?」 「可笑しいね、そんな簡単に言って退ける程単純なことじゃないのに」 もう歪んでる。嬉しいだなんて、思う私は。 「陛下の元へ行ったのは、私への当て付けでしょう?」 「さあ?彼女と婚約を断つ手段は幾らでも在ったのに、それを傘に私の反応を見て恍惚でも感じてた貴方が悪い」 「よく御存知で」 「貴方も随分な嫌がらせをしてくれたわね。許さない、私以外を抱いたこと」 「目には目を…ですよ。さてどうするんですか?当て付けにしては随分なリスクを背負いましたね。相手は皇帝ですよ。」 平気よ、これくらい。勿論貴方もでしょう? 「くだらない質問…ですね」 当然だという様に、彼は妖しく笑う。紅の瞳に呑まれてく。人はきっと狂気というだろう。それでも、この人になら偏屈な愛を囁いてもいい気がする。人が歪みを魅せる性は、黒く執拗に纏わってはふりほどくには程々困難だ。 深い愛を囁かれるよりも、深く根付く感情。 それは envy 逃げよう、キラキラ光る満天の星すら今や私たちの心には響かない ←prev|next→|short top |