ピオニーの寵愛を受けつつ、思い浮かぶのはいつも彼。重ねる体、快楽故に霞む視界をいいことにあの人に抱かれる夢を観る。

「イヴ」
「…っどしたの?」

荒く吐き出される息を互いに交える中、彼は言う。

俺の目、見ろよ

「!…」

きっと、彼には似合わない。たった一筋であれ。伝う雫が、ぽたりと一度。イヴの頬に落とされた。私に罪の意識を取り戻させる。私を、私として、留まる術を与え続けてくれる。彼が流したのは、そんな涙だった。

「ごめ…なさ…」

口に出した謝罪が何に対して、誰に対してのものだったのかはわからない。ただピオニーの流す涙があまりに綺麗で切なくて、イヴは背負い切れない背徳感を味わうことになった。

この人は何もかも解っている。

自分が誰に胸を焦がすのか、体を重ねる度に何を思うのか。解った上で甘んじて受け止めた彼の意思は、そう、ジェシカと同じ。ひたすらに待つ。その思いが誰に向こうとも。

約束された未来に、全てを託して。

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