恐ろしさのあまり、ジェシカはイヴの拘束を振り切り部屋のドアへと駆けた。

「…ジェイド!」

助けを求め、彼の名を呼ぶ。イヴは不快そのものといった顔をして、手にしたナイフを放った。ジェシカの頬を擦り、粋な音を立てドアへ刺さる。

「ひっ」

歩み寄るイヴとの距離が狭くなるにつれ、彼女の震えは大きくなる。

「その名を呼ばないで」

引き抜いた刃を彼女めがけて下ろす…ふりをした。寸でのところでピタリと止まり彼女の寿命を大きく縮めたところで、イヴの握る刃が舞った。

HE IS MY OWN


ジェシカの左胸に、パッと紅く文字が浮かぶ。彼は私のもの、と。

「理解できたかしら?」

涙でぐしゃぐしゃになった彼女を宥めるように問えば、首を縦にふるう。満足そうに微笑んで、にんまりとイヴは笑った。

「次はない」

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