月明かりに照らされる私は、今どんな顔をしてるだろう。想像したくもない。わかっている。それは今までにないくらいに歪んでいるの。修羅の顔。

自分自身こんな感情が湧くなど思いもしなかった。しかも私が腹を立てること自体お門違いだとも知っている。それでも止まらなかった。

この衝動


envy


淡く射す光はその部屋の二人をあくまで優しく包む。イヴは壁に彼女を押し付けていて、握る刃は彼女の喉元に添えられていた。イヴが妖しく微笑むのを目の前の彼女は震えながらもじっと見つめていた。歪むどころかその表情は凛と研ぎ澄まされ、妖艶そのもので。同じく女性であれ、その美しさに息を呑んだ。微笑んだその口元が、ゆっくり開かれて冷たい言葉が漏れた。

「貴女が…ジェシカ?」

どこまでも冷たく吹き抜ける声に、自分の名を呼ばれた彼女は順応しコクリと素直に頷いた。

「ふーん」

見定める様にイヴの視線が動く。雪の様に真っ白であろう、月が照らす光はその肌をより透明に魅せた。スラリと伸びた四肢。繊細な指先。金の長い髪に、青い瞳。整った顔立ち。全てがイヴの感情をざわめかせる。逆立つような憤り。部屋に入った時にみた、情事の終えた彼女の幸せそうな微笑みが脳裏に焼き付いている。焦げ付く程に、痛く、奥深くへ。

あの時何かが弾けた気がした。

気付けば、一糸纏わぬ姿のまま寝具を掛けた彼女を風よりも早く壁に打ち付けていたのだった。


←prevnext→short top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -