すき。と

ティアが告げた言葉は当の本人に聞こえたのかそうでないかは置いて。とにかく自分の耳にはしっかりと届いていたらしく、じんじんと鈍痛みたく残響する。

いざ、ルークの前に立てば言いたいこともままならず、困惑しきったイヴはひとつ切なげに笑っていた。

「大切なの」

ぽつりと、零れた。うん?と柔らかく微笑んだルークはただ真っ直ぐにイヴの言葉に耳を傾けた。

「ね、知ってる? 大事な人と大切な人は同じようで違うんだよ」

まるで謎かけのようだった。そして再度ルークに告げる。大切、と。その意味を理解しきるには幼いであろうルークだったが、それでも彼にこそ抱いた感情を吐露するには十分だった。

「大切な人だから。俺にとってイヴは」

きっとそういうことだと、はにかんだ笑顔は少し照れていて。けれどそれを向けられたら後は自惚れてしまう方が早かった。

「私聞き分けれるくらいいい子じゃないし、物分かりのいい優等生でもないよ」

―…一緒にいたい

今この瞬間も。独りにはしたくなかった。視界が涙で溢れた頃、それを拭う彼の指先に愛おしさが満ちた。

「嫌だ、ルーク…。独りで」

行かないで。

際限なく続く痛みにくらりとした。それを包むように落とされた彼のキスは突然で、触れるだけの優しいものだった。

「還ってくるから」


キスで留めて
心を攫ったまま背を向けた君の言葉がこんなに痛いくて暖かいなんて


還ってくる、だから。待ってて



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