◎甘美/ちょっかい(桐神×鈴葉)
▽p124 枕事件の日
「……馬鹿だろ、こいつ」
ほんの少し前、からかいの意味も込めて枕代わりに鈴葉を指名したら不服そうにしながらも横に寝転がってきた。
だが、今はその事実も嘘みたいにぐっすりと寝息をたてている。俺より先に夢の中だ。
誘導がこんなにチョロかったら、そりゃあ蓮みたいな奴にはさくっとヤられるだろう。親衛隊が少人数なのも頷けるが、あれはトップがイカれてるだけの問題な気もする。まあ大所帯で変に風紀との面倒が増えるよりマシだが。
「…、…」
不意にごろんっと背を向けていた身体が寝返りで此方を向いた。特に理由は無いけれど、暇つぶしに鼻を摘まんでやる。
「─っ、ん……う、、は」
眉間にシワを寄せながら、口呼吸に切り替わったタイミングで今度は口付けた。
「んっ…!ふ、…ン─」
そうしたら、ふうっとまた鼻から息を吐いて酸素を取り入れる。
「…は、ちゃんと上手くできんじゃねぇか」
「………──」
まだ少し眉間にシワが寄っているものの、返ってきたのは規則正しい寝息なわけで。
「……爆睡か。面白くねぇな」
そう勝手にひとり拍子抜けした俺は、鈴葉を抱き寄せて目を閉じた。
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