◎甘美/噂のあの人(モブ+鈴葉)
「聞いた……?鈴葉様の親衛隊、少しだけ増えたんだって」
「えっ、入れるようになったの?」
「ううん、今回はその数人だけらしいよ」
「そっか……いつそんな受付なんてしてたんだろ……」
「わかんない……噂では隊長から直々にお声がかかったみたい」
「えー…いいなぁ……」
「ほんとに、、羨ましいよね」
図書室。
ひそひそと聞こえてきた会話に思わずため息をつく。
何かと噂は流れてくるものだけれど、
今日で何度似たような話が聞こえてきたか。
「つーか、なんで図書室で話そうとするんだか、、結局借りねえし」
しかもよりにもよって俺が当番の日に。
「あの、すみません、」
「!、はい」
「これ、借りたいんですけど」
「あ、はい。学生証お願いします」
「はい」
ピ、と本に貼り付けられているバーコードと学生証の磁気を読み込む。
やっと1人目の貸出者だ。
ええっと、名前は──樋坂鈴葉、
猫の大冒、険………
………は?
鈴葉って、、
「鈴葉、さま?」
「?、、…はい、?」
きょとん、と声に出てしまった呼び掛けに本人が首を傾げる。
初めてこんな間近で役員を見たが、確かに、めちゃくちゃ美人だ。
つか、マジかよ……生徒会って普通に本借りにくんのか!?
「いや、あの、スイマセン。貸出期間は2週間です。もし返却日に延長希望の場合は予約がなければ可能なので、、また」
「はい、分かりました」
「あっ、こちら、学生証と、本です」
「ありがとうございます」
ふんわりと少し微笑んで去っていく噂の彼。
もしさっきの生徒達が居たら吃驚していただろう。
そうしてこの後、
猫の大冒険が貸出大戦争になることを俺はまだ知らない。
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