「………この事案は初めてだね」


生徒会室。

結局柴麗さんが現れることはなく撤収の時間が来てしまい、今に至る。

なんでもデート権を放棄?した生徒は今までいなかったらしい。

「柴犬と言えど、後々来るんじゃないの〜〜?」

「まぁ、、周りからの念にどれだけ耐えれるかの問題ではあるだろうね。本当に樋坂君とデートしたかった生徒達は放棄なんてされたら気分は良くない」

「そのうち痺れ切らして駆け込んでくるって〜わんわーん」

「…………」

所々、いいやかなりツッコミたい単語がいくつかでてきたが、二人とも真剣に─普通に会話しているせいで黙るしかなかった。会長は席に座っているけれど、目は瞑ったままでだんまりだし、柴犬って、俺が知らないだけで通り名かもしれないし……。


「そういうことだから樋坂君、暫く様子をみよう。僕達の分は先に提出してくれて大丈夫だよ」

「え、駆け込み待ち、、するんですか?」

「もしかすると廊下でも会う可能性もあるしね」

「はあ、」


そんな簡単に解決するもの…?


「とりあえず、提出してきます」

「うん、よろしく」
「いってらっしゃーい」


そう扉に手を掛けたときだ。


ばんっ!!!!と思いっきり扉が開いて、
俺も思いっきり尻餅をついた。

寿命も減った気がする。


「…い、った……」

「テメェふざけんなよ…!!」

「…え──うわあ!?!?」


状況を理解する前に、俺は腕を掴まれて、その勢いのまま何処かへと連れていかれる。なんだか毎回引っ張られてる気がするなぁ…。

ていうか、ものの数秒で本当に駆け込んで来るとか、先輩達勘よすぎませんか。




*



「ほんとに来ておれびっくりしちゃった」

「……本当に来たね」

「アイツうるせぇ、出禁にしとけ」




mae ato



86/143 / shiori








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