「………この事案は初めてだね」
生徒会室。
結局柴麗さんが現れることはなく撤収の時間が来てしまい、今に至る。
なんでもデート権を放棄?した生徒は今までいなかったらしい。
「柴犬と言えど、後々来るんじゃないの〜〜?」
「まぁ、、周りからの念にどれだけ耐えれるかの問題ではあるだろうね。本当に樋坂君とデートしたかった生徒達は放棄なんてされたら気分は良くない」
「そのうち痺れ切らして駆け込んでくるって〜わんわーん」
「…………」
所々、いいやかなりツッコミたい単語がいくつかでてきたが、二人とも真剣に─普通に会話しているせいで黙るしかなかった。会長は席に座っているけれど、目は瞑ったままでだんまりだし、柴犬って、俺が知らないだけで通り名かもしれないし……。
「そういうことだから樋坂君、暫く様子をみよう。僕達の分は先に提出してくれて大丈夫だよ」
「え、駆け込み待ち、、するんですか?」
「もしかすると廊下でも会う可能性もあるしね」
「はあ、」
そんな簡単に解決するもの…?
「とりあえず、提出してきます」
「うん、よろしく」
「いってらっしゃーい」
そう扉に手を掛けたときだ。
ばんっ!!!!と思いっきり扉が開いて、
俺も思いっきり尻餅をついた。
寿命も減った気がする。
「…い、った……」
「テメェふざけんなよ…!!」
「…え──うわあ!?!?」
状況を理解する前に、俺は腕を掴まれて、その勢いのまま何処かへと連れていかれる。なんだか毎回引っ張られてる気がするなぁ…。
ていうか、ものの数秒で本当に駆け込んで来るとか、先輩達勘よすぎませんか。
*
「ほんとに来ておれびっくりしちゃった」
「……本当に来たね」
「アイツうるせぇ、出禁にしとけ」
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shiori
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