*甲斐凪視点


「……E組、出席番号28番」

バンッ、と意識のなくなったそいつをそこらへんに投げ捨てる。これで最後だ。

想像より散らばっていたせいか、時間がかかってしまった。残り時間はあと50分。

「制裁は見つかり次第風紀に取り締まられるぞ」

「結構──それより、あんた何してる?」

ついさっき、鈴葉様が捕まったというアナウンスが流れた。相手は目の前の戌川雅也ではなく、柴麗秋だ。

「……わざとじゃない。それだけは言っておく」

「………。Sクラスの得点の予想は?」

「……?、2年のか?」

「、」

「……Sは……3位か、4位だろう。例年の平均からしてE組がトップ…あの柴麗でさえこだわってたからな。争えるとしてもB組じゃないか?」

「……ならあんたに用はない。桐神でも追っておけ」

「…おいおい、…何歩譲っても俺のストラ……いや、そうだな。好きにさせてもらう」

「…………?」

何かを言いかけた戌川に不信感を抱くが、そろそろ此処を移動しなければ風紀の見回りが来る。それに、これ以上鬼側と接触しているのは危険だ。いつどこで見られているか分からない。

不正棄権は親衛隊の恥だ。


「…………Bか、」

「あくまでも予想だぞ」

「!、……─口を挟むな。あっち行け」

「ここを抜けるには方向は同じだ。走ってれば問題ない」

「……」

「ひとつ聞くが…鈴葉が捕まったにしては冷静だな。想定内だったのか」

「……教える義理もねぇよ」

「、そうか」


不本意でも、面倒な貸しはさっさと返しておいたほうがいい。


mae ato



80/143 / shiori








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