「美術、準備室…………?」

ではご一緒に、と連れてこられた場所。購買にも寄っていなければキッチンもない。中は準備室というよりは綺麗な空き教室みたいに整っている。美術に繋がりがあると言えば棚に画材がたくさん入っているくらいだ。

「何か食べたいものはありますか?」

「うーんん、…メロンパンとか、クリームパンとか、バターデニッシュとか?」

「分かりました」

そう言って携帯を弄りはじめた。もしかして注文制度なんてものがあるのかと思っていたら、準備室の扉が開く。

「隊長、ここだとやっぱり他の部員、が……………………え……………………なん、………うそだ……………」

弁当の包みだろう物を持った生徒がそのまま動かなくなった。隊長って言ったってことは隊員、さん?

俊を見るも未だ携帯を弄ったまま彼の事は無視している。

「…………俊?あの、生徒さんが……」

「……ああ、隊員ですからお気になさらず」

違う。そうじゃない。

何かしら彼にリアクションをとってあげてほしい。あのままでは動けなさそうだ。

「東、何を突っ立って──……、」

不意にまた誰かが来たと思ったら、生徒さんを中に入れて同じように固まった。けれどすぐに我を取り戻した彼は怪訝な表情だ。

「甲斐凪、これは?」

「見ての通りですが」

「カウントはどうなる」

「とりませんよ。お好きな場所へお座りください」

「……わかった」

ちらりと此方を伺ったその人は小さく俺に会釈をしてもう一人の隊員さんを引っ張りながら少し離れたところに座った。

正直に言おう……どっちも顔が整っていらっしゃる。有馬くんと藤崎くんは可愛い系だったけれどこっちは格好いい系というか、


ん……?俺は何言ってるんだ……。


mae ato



72/143 / shiori








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