「……え?、ええ?」

「おはようございます、鈴葉様」

軽くシャワーを浴びたあと、リビングに戻ってきたらとても爽やかな笑顔で挨拶をしてきた俊に出迎えられる。雅也は何ら変わりはないとでもいうふうにしれっと椅子に座って雑誌……っぽいびーえるとかいうやつ……を読んでいる。


どういうことだよ、おい。


確かにたった今着たこの服は俺の服だ。ここにはないはずなのでつまり俊が持ってきたと考えるのが妥当なわけだが……


「な、なんでここに……」

「?、変な事をお訊きになられますね。会いにきました」

「………えっ、だって、メール、」

「確かに昨晩は聞き捨てならない連絡をいただきましたが、今日は何も連絡はありませんでしたので」

「……は?」

「……何か間違ったことを言ってますか?あれは昨晩いただいた内容であって今日は日付そのものが違います」

「…………」


そうだけど……そうだけどさ!?

一本取られたとはこういうことなんだろうか。俺の周りにはずる賢い……頭の回転が早い人が多くて困る。


「鈴葉様、」

「……なに」

ここはもう受け入れるしかないと思い、椅子に座っていただきますをする。斜め向かいに座っている雅也は本から目を離さないけれどページが進んでいないのはバレバレだ。コノヤロウめ。フレンチトーストは美味しい。


「文面には嫌いになる、とありましたがそれはつまり好き、ということでしょうか」

「えっ、なんでだよ」

「…なんでって……」

む、と機嫌が下がったのが空気で伝わってきた。俺は普通に友達……知り合い……?として嫌いじゃないのは事実だが、あのメールはそこまで好きとか嫌いとか意識していない。

「ならどうして─」

「……だから、あれはその、部屋に戻ったら絶対に俊は居るか来るだろうし、そしたら昨日抱かれたこと思いだすから何か恥ずかしくなったからっていうか……う〜ん……先輩にヤられたあとなのにぶり返して抱いてきたから整理できなかったんだよ!それで適当に送ったから特に意味とかないし!」

言い終わったタイミングと同時、バンッ!っと雅也がコップを机に叩き置いた音と重なった。


「…………うん?」



一口フルーツを食べながら今言ったことを思い出す。




ああ…………とんでもないわ…………。


mae ato



67/143 / shiori








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