「ミルフィーユひとつなんかで無理だ……」
「悪い、状況が見えない」
「…………全部忘れるとか無理だ」
気にしなければ何ともないかと思っていたけれど、自分で思っている以上にこの2日間が精神にキているらしい。内容が濃すぎて後々理解してきていたたまれなくなるというか、なんというか。凄いことされたなっていうか。
七恵先輩にはどこで会うか分からないし、部屋に帰ったら俊に会うだろうし。
それで部屋へは戻らずに雅也の部屋にやってきたのだ。ちゃんと一般生徒にバレないよう忍んだところは褒めてほしい。
「……鈴葉」
「……今日ここに泊まる」
「、甲斐凪が許さないだろ」
「俊にはメールで連絡しといたから大丈夫」
「メールで納得するような男か」
「探したら嫌いになるって言った」
「………………」
そう説明したらぎょっとされた。
「えっ、なに」
「いいや……今日は不憫な奴だなと思っただけだ」
「……?」
「それで、事情が分からないんだが?」
「、…あ……うん……ええっと、」
事情……。
「…………」
「なんだろ……うーん……と、っ、」
なんといったらいいのか、うまく整理がつかぬまま気持ちが先走って視界がじわりとぼやける。
ああ、だめかも。
「!、鈴葉……?」
「ごめ、ん……わかんない……なんでだろ」
次第に訳の分からない涙がぽろぽろと溢れてきて拭えば拭うほど呼吸はどんどん苦しくなって─
「おい、大丈夫か」
「っ、ん……だいじょ、ぶ」
「………いきなり泣くな」
背中を優しく撫でられながら、そっとタオルを渡してくれたのを黙って受け取って顔を埋めた。
「……何か飲むか?」
「…、…ん……」
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shiori
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