「ごちそうさまでした」

「ん?いいよ。あのくらいいつでも言ってね」

「いつでもですか、はは……」


午後の授業が始まって、静まった食堂を背に副会長さんと生徒会室へ向かう。会長と七恵先輩は少し前にそれぞれ何処かへ行ってしまった。本当にこの生徒会メンバーは……。雅也がいつも語っていた物語?より仕事していない気がしてならない。気のせいか?


「風紀は大丈夫だった?」

「あ、はい。なんとか」

「そう。なら大きい仕事はひとまず片付いたかな、お疲れ様」

「ありがとうございます、お疲れ様です」

「うん。あと、これ渡しておくよ」

「?」

はい、と渡されたのは絆創膏。普通に受け取ってしまったけれど、俺の記憶が確かなら怪我をした覚えはない。

「えっと、」

「見えてる」

「、みえてる?」

「キスマーク」

「っ!?」

咄嗟に首もとを手で隠す。

いま、なんていった……?き、きすまーくだって……?そんなの俺は知らない。知らないぞ……!

「よく見ないと見えにくいところだけどね」

「……そ、ですか」


それならまだよかった……いいやよくない。誰も指摘してくれなかっただけで何人に気づかれているか分からないのだ。こんなことなら朝にちゃんと鏡を見ておくべきだった。


俊のやつ……!


「樋坂君、」

「はっはい」

「今のは冗談」


……冗談?




mae ato



62/143 / shiori








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