俺は確か、シロと一緒に穏やかに寝ていたはずだった。はずだったんだ……
キャアアアアアア!!
「!?!?!?!?!?」
起こしてくれたのはチャイムでもアラームでもシロの鳴き声でもなんでもなく、男子校にあるまじき歓声だった。どんな目覚ましよりもうるさい。本当にうるさい……
しかも、食堂という公の場で、俺は会長に抱っこされているようだ……。
「…あ、あの、ですね」
「…………」
「これは、あの、どういう、」
「落ちンぞ」
「うっ」
食堂、会長、この歓声、それだけで血の気が引いていく。
「っ、……(雅也は……?俊は……?)」
どうにもならないとは分かっていても、助けてくれそうな二人を探してみる。が人が多すぎて意味はなかった。食堂のメニューが重いことより、この大歓声の居心地の悪さのほうが俺は嫌いだ。
「(てか、めっちゃ視線感じる……っ!!むり!!)」
「隆也……樋坂君を連れてくるのはいいんだけどね、見かけたら頼んだ覚えもあるんだけどね……」
「樋坂ちゃん死にそうな顔になってるよ〜」
「アァ?起こしても起きなかったコイツが悪いな」
どんっ、とふかふかな生徒会専用のソファに下ろされる。ついでに購買の袋も渡された。俺のご飯無事だったよかった。
「庭で拾って、来る途中で俺はちゃんと起こした。文句言うンじゃねぇ……」
「樋坂ちゃんって庭に落ちてるの???」
「蓮、もういいから。隆也も」
会長達が何か言っているが、正直それどころではない。どうしよう。食欲なんて皆無だ。何で俺は気づかなかったんだ…気づいていれば今頃この状況は回避できたはずだ。ぐるぐる頭がまわる。
「樋坂君、大丈夫……?」
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shiori
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