*藤崎視点


「これって、無、無理じゃないですか……?僕あんまり走りが早いってわけじゃないし……」

「だから俺が引っ張ってけばいいってこと。藤崎くんを、七恵サンのところまで」

美術室─

筆を走らせながら東先輩は言った。他の二人はなんともいえない顔をしているけれど……。

「でも僕が、皆のこともそうだけど、追いかける側なのは当日まで分からないのに……」

「……隊長が確信なくこれは送って来ないだろ」

「うう……そうだけど……」

さっき、やっと放課後になって携帯を確認すれば、隊長から皆にメールが来ていた。内容は新入生歓迎会のことで、どういう理由なのかは何も分からないけれど、僕と東先輩が追いかける側、佳汰くんと志井先輩が逃げる側でそれぞれ役割が書かれていたのだが、僕の役割が、あの七恵さんを捕まえるということだった。

「あの人の親衛隊の人達もいるし……」

「しゃーねえだろ、やるしか。何かあんだろうしよ」

「確かに、君の言うとおり何かはあるっぽい。知らされることはないと思うけど」

それはそうだ。隊長は鈴葉様の関連のないことには動かない人だから……。つまりこの指示は──

志井先輩は、何も言わずにため息をついていた。


「……鈴葉様」


僕、頑張ります。



mae ato



45/143 / shiori








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